研究課題/領域番号 |
23540146
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
藤田 景子 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (40274568)
|
キーワード | 逆問題 / 信号源分離 |
研究概要 |
我々の時間周波数情報の商を考察する信号源分離の手法の大きな問題点の一つに信号源の数が増えると分離が難しくなるということがある。この状況をより詳しく考察するために、関数を時間周波数領域に移した像についての詳しい情報が必要となる。 そこでまず球面上の関数で考えてみることにした。球面上の関数を考えるのは、これまで球面上の関数についての研究を行ってきており幾つかの研究成果が得られているからである。さらに、用いる積分変換も分かりやすいガボール変換で考察してみた。ガボール変換は窓フーリエ変換とも呼ばれ、我々のフーリエ・ボレル変換に関する研究成果が役に立つからである。その結果、球面上の2乗可積分関数や超関数のガボール変換像を球面調和関数とベッセル関数を用いた級数展開でどのように与えられるかを示した。その結果は、5月8日から11日まで東京の私学会館で開催された国際会議 "Sixth International Conference on Information" の "Applicable mathematics" のセッションで "Gabor transformation on the sphere" の題で研究発表を行った。また、8月5日から10日までポーランドのクラコフで開催された国際会議 ”ISAAC 2013”では、連携研究者の大阪教育大学守本晃准教授とセッション "WAVELET THEORY AND ITS RELATED TOPICS”を企画した。そこでも ”Gabor transform of analytic functional on the sphere”の題で研究発表を行った。 発表内容は、Springer から出版される ”Current Trends in Analysis and its Applications/ Proceedings of the 9th ISAAC Congress, Krakow 2013" に掲載が決まっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体像を掴むために対象の関数空間を球面に狭めて考察する事にしたが、数値実験を行える段階にまで進まなかった。数学の理論部分の研究に留まり応用面での考察が進んでいないというのが現状である。
|
今後の研究の推進方策 |
ウェーブレット変換などにより時間周波数情報を利用して信号源分離を行う際に重要な過程は信号源の数を推定することである。我々が信号源の数の推定に用いる手法は、観測信号を時間周波数空間に変換して2つの観測信号から得られた時間周波数情報の比を考えることである。この方法では信号源の数が増えると分離が難しくなるなど幾つかの問題点がある。このような問題を解決するために、まず球面上の関数に対象を制限して考察することにした。球面上の関数のガボール変換像は我々が研究してきた球面上のフーリエ・ボレル変換像と関連があり、我々の既知の研究成果が研究推進に役立つと考えられる。実際、既知の結果を利用して球面上の関数のガボール変換像を球面調和関数とベッセル関数を用いた級数展開で表示することができたが、逆変換を具体的に構成することはまだできていない。関数の級数展開表示に現れる関数は球面調和関数やベッセル関数といった特殊関数でその性質はこれまでにいろいろと研究されている。そこで、特殊関数のもつ既知の性質をもとに関数の性質を調べるとともに我々の既知の研究成果を参考にして逆変換を具体的な形で表わすことができないか、などの考察を行う予定である。 研究推進には情報交換など他の研究者との交流が重要な役割をはたすので、研究費は主として旅費に使うことになる。研究費の使用欄に記入した研究集会などに参加することによって情報交換を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
参加予定で参加しなかった研究集会があったため。 持ち越し分は不足している来年度の旅費にあてる。 旅費:7月に中国の蘭州で開催される国際会議”ICWAPR”で研究発表を行う予定である。9月には政策研究大学院大学で開催される応用数理学会年会、広島大学で開催される数学会秋季総合分科会、10月には京都大学数理解析研究所で開催される研究集会”ウェーブレット解析とサンプリング理論”に参加予定である。秋には豊橋技術科学大学で開催予定のワークショップや大阪教育大学で開催予定の研究集会”ウェーブレット理論と工学への応用”などへの参加も予定している。3月には明治大学で応用数理学会研究部会、数学会年会もありそれらの研究集会にも参加予定である。その他不定期に開催されるウェーブレット研究セミナーなどへの参加も予定している。 消耗品費、その他:研究関連図書、ハードディスクやUSBメモリーなどの消耗品、および、論文投稿費、別刷り費用、会議の参加費などの経費が必要である。
|