研究課題/領域番号 |
23540148
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
城本 啓介 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00343666)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 符号理論 / マトロイド / 量子情報理論 / 組合せ論 |
研究概要 |
研究代表者の代数的符号理論におけるこれまでの主な研究として,与えられたパラメータや性質をもつ符号の存在問題の考察および構成法の提案がある.本研究においては,これらの研究を軸として,工学的応用も視野に入れた組合せ論および量子情報理論における同種の問題を新たな視点から研究し,異なる分野間における統一的構造の理解をより深めることを目的として研究を行った. 本年度においては,当該研究期間の初年度における研究結果の一般化および更なる研究の基盤づくりを目的として,符号と量子情報理論の相互間研究および有限環上の符号とマトロイドの相互間研究に主に取り組んだ.具体的な研究成果は以下の通りである.1.整数環上の符号による量子信号系の通信路行列の解析解の導出:量子情報理論において,測定過程として Square-root measurement (SRM) を用いることによ様々な成果が示されている.本研究では,整数環上の符号が群共変的であることを確認し,SRM を用いた整数環上の符号に対する量子信号系の通信路行列の解析解を示した.さらにその有用性を確認するため,整数環上と拡大体上の符号による量子信号系の相互情報量及び平均誤り率の比較を行った.2.整数環上の符号によるマトロイドの構成:ベクトル空間の概念を有限集合へ拡張した構造を持つマトロイドが,有限体上の符号から構成されることはよく知られている.そこで,本研究ではマトロイドをさらに一般化した離散構造が有限環上の符号から構成されることを示し,フロベニウス環上の符号に対するマックウィリアムズ恒等式の別証明を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マトロイドの表現問題及び量子情報理論におけるSIC Setに対する符号理論的考察を行うための関連研究に取り組み,予想に近い結果を得ることができたので,本研究に関してはおおむね計画通りに進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,当初予定していた計算データの採取及び解析については,それほど大がかりな計算をすることなく理論的考察の糸口がつかめたため,理論的な研究に中心に取り組んだ.ただし,未だに糸口が見つからない対象物も多くあることから,次年度以降は徐々に計算データの解析に関する研究の比重を大きくする予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況と研究機器のバージョンアップに対応して,今年度予定していた計算サーバーの購入を次年度に行うこととした.また,今年度得られた研究結果の発表及び他研究者との情報交換のため,12月にシドニーで行われる国際会議に出張する予定である.
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