研究概要 |
異なる媒質間を隔てる境界が時々刻々と変形していく現象の数理科学的問題を移動境界問題と総称する.異なる物質,あるいは同一の物質でも異なる状態であれば,それらの間には境界が存在する.したがって,身の周りの至る所でそのような動く境界は観察され,その時間変形する境界を首尾良く追跡することは,理学的にも工学的にも重要な課題となっている.現在までに,様々な移動境界問題に対して,個別に``良い''解法が開発されているが,統一解法はない.一方で,その``良さ''は統一的な視点から解明されつつある.そこで,当該申請研究では,個別問題で発展している解法を統一的に扱い,汎用性が高く,単純で,高精度で,かつ元の問題の性質を保存する解法・数値スキームを確立することを目的とする. 以下,``良い''解法,あるいは良い解法を用いた計算や問題を列記すると,(1)クリスタライン曲率流, (2)曲率調節型の移動境追跡法, (3) 折れ線曲率流, (4) 負結晶成長のモデリング, (5) 非局所的Allen-Cahn方程式を用いた非等方的面積保存曲率流, (6) 時間変化する隙間をもつHele-Shaw流れ, (7) 縦置きHele-Shawセル中を上昇する泡運動のモデリング, (8) Belousov-Zhabotinsky反応(BZ反応)における螺旋現象のモデリング, (9) 爆発問題, (10) 自己相似解の完全分類,となる. 移動境界問題は非線形性が強いため,どの問題にも通用する万能の解析法は確立されていないが,上記項目の特に(2)や(3)の研究が発展し,それより,統一的な解釈がなされつつある.そして解析手法を統合・敷衍することは現在進行中の研究である.
|