研究課題/領域番号 |
23540158
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
町田 元 国際基督教大学, アーツ・サイエンス研究科, 研究員 (40090534)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 離散数学 / 普遍代数 / 多値論理 |
研究概要 |
本研究は,普遍代数や多値論理の分野で重要な位置を占めるクローン理論に属す研究である。クローンとは,簡単にいうと,与えられた集合 A の上で定義される多変数関数の集合で(関数の)合成に関して閉じているもののことである。集合 A (|A| > 2) を固定したとき,A 上のクローンの全体は(連続濃度をもつ)束をなす。クローン理論では,クローン束の構造の解明を究極の目標とするが,それは極めて困難な目標であり,クローン束の解明は,いまだに,ほとんど達成されていない。23年度から25年度におよぶ本研究においては,クローン束を念頭に置きつつ,関数の交換可能性に基づいて定義される中心可能クローンの分類と中心可能モノイドの分類にとくに焦点を当てて,研究を進めている。具体的な研究目的は,(i) 極大中心可能モノイドと極小クローンの関係の解明,(ii) 極大中心可能モノイドの分類,(iii) 中心可能モノイドの分類,および,(iv) 中心可能クローンの分類である。当該年度である23年度には,とくに,一般 (|A| ≧ 3) の場合の「(i) 極大中心可能モノイドと極小クローンの関係の解明」の研究と,3値(|A|=3)の場合の「(iii) 中心可能モノイドの分類」についての研究を行った。このうち,前者についてはまだ顕著な結果が得られていないが,後者の3値の場合の中心可能モノイドの分類については,極大中心可能モノイドのみならず,すべての中心可能モノイドを決定するという成果をあげることができた。これは当初の期待を上回る成果であった。3値の中心可能モノイドの総数は192個である。共役を除いた中心可能モノイドの個数は48個である。また,自明でない中心可能モノイドの要素数の最大値は17である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標の一つである,極大中心可能モノイドと極小クローンの関係については,まだ,顕著な成果が得られていないが,もう一つの目標であった3値の場合の中心可能モノイドの分類については,すでに,すべての中心可能モノイドを決定するという研究成果を得ることができた。これについては,事前の予測を上回るペースで研究を進めることができた。今後の研究に向けての一つの重要なステップが得られたことになる。
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今後の研究の推進方策 |
23年度中に,海外で開かれたシンポジウムや研究集会において本研究課題に関する研究発表を数回行った。話を聴いたうちの数人からいくつかの参考意見を得たが,とくに,本研究で最も興味深いテーマである「極大中心可能モノイドと極小クローンの関係」については,国外の複数の研究者の強い関心を引いた。今後の研究を進める際には,これらの研究者と直接議論を行い,検討や助言を得ながら研究を進めることが極めて重要であろうと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画について、概ね,当初の計画通りに行う。上にも触れたように,海外,とくにヨーロッパやカナダには,本研究に強い関心を持つ研究者が多数存在する。次年度も引き続き,海外での研究集会に出席して研究発表を行うとともに,研究上の興味を共有するそれらの研究者たちと直接議論し,また,検討を行う機会をなるべく多く持つようにしたい。そのための活動に研究費の多くを振り向けることが,本研究の進捗のため有効であると考える。なお未使用額については次年度参加予定の学会参加費に充てた。
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