研究課題/領域番号 |
23540163
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石渡 恵美子 東京理科大学, 理学部, 教授 (30287958)
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研究分担者 |
福田 亜希子 東京理科大学, 理学部, 助教 (70609297)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 差分方程式 / 数理生物モデル / 安定性 / 遅延微分方程式 |
研究概要 |
数理生物モデルの定性的性質については連続型モデルに対するものがほとんどであり,離散型モデルについてはあまり与えられていない.それに対し,我々はモデルの正値性を保つように離散化を工夫することで,連続型モデルで用いられている証明方法がそのまま適用できることを示してきた.本年度は,ワクチン投与を考慮した時間遅れを持つSIRモデルに対する成果が論文として掲載された(13.研究発表の雑誌論文1番目).一方でここ数年,数理生物モデルに起因する可積分な離散ハングリーロトカ・ボルテラ系に基づく固有値計算アルゴリズムの共同研究を進めている.方程式が煩雑なために未解明だった,離散ハングリー系と呼ばれる幾つかの方程式同士の変数変換を行列の相似変換と関連付けることで見い出すことに成功し,特に平成23年度は可積分な離散ハングリーロトカ・ボルテラ系の積型と呼ばれるタイプの性質を調べ,掲載決定となった(雑誌論文2番目).さらに,収束を早めるための常套手段である原点シフトを導入(雑誌論文4番目),他のアルゴリズムを提案した論文も投稿している.なお,上記の離散ハングリーロトカ・ボルテラ系に基づく固有値計算アルゴリズムの局所的な収束性の議論に有効な中心多様体の存在も見い出しており(雑誌論文3番目),性質の解明を続けている.離散可積分系の研究では,病理モデルに対する超離散化の成果がすでに幾つか与えられている.我々が提案している正値性を保つ病理モデル,特に遅れを含む場合に対して,超離散化をどのように行うか,どのような関連性が出てくるのか?を引き続き模索する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように,特に時間遅れを含む離散型病理モデルに対する成果を,ここ数年,出している.また,離散ハングリー系として与えられている差分方程式の性質の解明も着々と進めており,双方の関連性を見出すための準備は整いつつある.よって,達成度はおおむね順調と考える.次年度には,遅れを含む離散型病理モデルが離散可積分系,特に超離散化した場合に,どのように対応するのかを具体的に検討する.それらから研究課題にあるように,差分方程式同士の関連を具体的に見い出す作業へと進める.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度の欄で書いたように,1年目に双方の成果が色々と出ている.次年度は差分方程式同士の関連性が見い出せるように,できるだけ簡単なモデルをそれぞれ取り上げて,もう少し具体的に比較・検討を始める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は大震災があり,秋まで70%交付という制約もあって,謝金の申請を控えたり調整して使用した.次年度は資料の整理や差分方程式に対する数値実験など,院生の協力が必要になる部分もあるため,謝金は必要となる.また,旅費は引き続き,多めに見積もっている.離散可積分系に関する共同研究を精力的に進めたことで多くの成果が導けた経緯もあり,研究打合せのための旅費は必要といえる.さらに平成23年度は,得られた成果を積極的に国際会議で発表した.その結果,アメリカやスペインの専門家が具体的に興味を持って,有意義な質問やコメントをくださった実績もある.次の発展につながる貴重な意見をもらえることもあり,国内外での研究成果発表の旅費も多く配分している.
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