研究課題/領域番号 |
23540163
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石渡 恵美子 東京理科大学, 理学部, 教授 (30287958)
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研究分担者 |
福田 亜希子 東京理科大学, 理学部, 助教 (70609297)
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キーワード | 差分方程式 / 数理生物モデル / 安定性 / 遅延微分方程式 / 離散可積分系 |
研究概要 |
近年,ある種の病理モデルに対し,既に多くの成果が与えられている連続型モデルではなく,特有の離散化で正値性を保てる離散型モデルでの定性的性質を幾つか示している.一方で,可積分な離散ハングリー系(ある種の差分方程式)に基づく固有値計算アルゴリズムの導出や方程式の性質の解明を共同研究で精力的に進めている.これらの離散可積分系には,数理生物モデルに由来する離散ハングリーロトカ・ボルテラ(dhLV)系があり,これに基づくアルゴリズムの定式化のみならず,方程式の性質や相関は既に解明している.特に今年度は,積型と呼ばれるdhLV系に基づくアルゴリズムに対し,その収束の終盤における局所的な安定性について,中心多様体理論を用いた成果を得ている(13.研究発表の雑誌論文1番目と学会発表2-4番目). 本課題の目的は,相異なる差分方程式同士の関連を見出すことであり,達成に向けて,以下の検証を今年度も続けてきた.数理生物モデルの中でも,ある種の病理モデルの遅れを含まない例を取り上げ,可積分系の1手法である超離散化によって得られた差分方程式に対し,安定性の条件の導出を試みている.通常,連続型モデルでの安定性の条件と同等のものは単純な離散化では得られない.しかし,検証を進めるうちに,類似な条件が出ることがわかってきた.まだ現状では精査の必要があるが,次年度(最終年度)には本成果の論文投稿と,遅れを含めた場合との違いまで明らかにすることで,ある種の差分方程式と遅延微分方程式の関連まで示したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は数理生物モデルの中で,可積分な積型離散ハングリーロトカ・ボルテラ系に関し,既に定式化されていた固有値計算アルゴリズムの局所解析について,具体的な成果を得た.しかしながら,研究課題の目標達成にはまだ至っていない.やや遅れているように見えるが,ある種の病理モデルの超離散化を試み,得られた差分方程式の解の安定性の条件を導出したことで,今年度の終わり頃になってようやく,通常の連続型モデルの安定性の条件と同様の結果を出す見込みがわかってきた.よって,これらを精査することにより,次年度(最終年度)には遅れを含む問題まで視野に入れた目標達成の見込みがあると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
上記の「現在までの達成度」欄で述べたように,数理生物モデルに起因する差分方程式を利用して,数値計算に関する安定性の研究成果は着々と得られている. 次年度は最終年度となるため,目標をできるだけ達成するために以下をさらに推進する.ある種の遅れを含まない病理モデルの超離散化と安定性の条件の導出を試みたことで,まだ精査する必要はあるが,遅れを含んだ場合で同様の手続きを経ることにより,関与する箇所を見つけて,目標達成まで進めたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き,得られた成果は論文として投稿したり,国内外で発表を行う.次年度(最終年度)は離散可積分系の成果発表のみならず,課題に関する論文投稿には,病理モデルの専門家との議論が重要になると考える.したがって,研究打合せの招聘分も含め,旅費を多めに見積もっている.また,数値実験や資料収集などの謝金も見積もっている.
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