研究課題/領域番号 |
23540165
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
上山 大信 明治大学, 理工学部, 准教授 (20304389)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / パターン形成 / 自己組織化 / 反応拡散系 / シミュレーション / 偏微分方程式 |
研究概要 |
本年度は研究のスタートアップに向けた計算機環境の構築と、研究のベースとなるモデルの構築を行った。 Liesegang型沈殿現象の基礎モデルは既に申請者等によって作成されているが、モデルに含まれるノイズ項に関して、その性質とパターンの関係について主に検証を行った。ノイズ項は、沈殿現象におけるランダムな核形成を表現しているが、核形成の原因としては主に二種類が考えられる。一つ目は、ゲル由来の核形成で、ゲル内の不純物や欠陥によるものと考えられる。二つ目は、コロイド粒子間衝突が原因となるものである。これらはそれぞれ、空間に固定されたノイズ項、時空間ノイズ項で表現できると考え、異なるノイズ項によって最終的なパターンがどのように変化するかを考察した。また、ノイズの種類によっても違いが見られるかについても検証を行った。 結果として、Liesegang型沈殿現象において特徴的なパターンであるバンドパターンには、時空間ノイズが必要であり、空間固定のノイズではバンドパターンは生じ無い事が判明した。またノイズの種類については、生成パターンに大きな影響は与えないことも判明した。 現状、計算量の関係から全て2次元領域における検証であるが、実現象が3次元領域における問題である事から、本研究の3次元問題への拡張が必要となる。その為には、高速な計算が必要となるが、現在科学技術計算分野において脚光を浴びているGPGPUは本研究においても最適である。3次元計算については複数のGPGPUボードを用いた並列計算が必要となるため、2枚のGPGPUボードを搭載したGPGPUシミュレーションサーバを購入した。また、既存の計算コードをそのまま利用できるPGIコンパイラを購入し、来年度以降の3次元計算に向けた環境構築が完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、既にあるモデル方程式に対して、これまでその検討が十分ではなかったノイズ項について、主にシミュレーション結果から評価を行った。また、シミュレーション設備の導入と、その動作確認ができており、次年度に向けた本格的な中規模シミュレーションの準備が整った。但し、計画にある、反応拡散系GPGPU計算のノウハウの公開は限定的なものとなっている。理由は、具体的な問題に対するノウハウの公開では無く、より一般的な公開を目指しているためで、今後有用な情報の蓄積を待って公開を行う予定である。 本年度の計画として行う予定であった実験系の構築はできなかった。実験家とのコミュニケーションにあてる時間を確保することができず、十分な検討ができていない。本研究で問題とするノイズの影響をコントロールできる実験系の構築は難しく、今後も実験家とのコミュニケーションを行い、継続して検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究を継続しつつ、特に3次元問題を対象としたシミュレーション研究を行う。Liesegang型沈殿現象は、空間3次元問題であり、特徴的なバンドパターン以外にヘリカルパターンなどが生じる。シミュレーションにおいても、ヘリカルパターンが生じる事は既に研究の前段階で確認しているが、シミュレーション精度が粗く信頼性が乏しい。前年度導入したGPGPUシミュレーション設備を用い、ノイズの強さを変化させ3次元計算を行う。 2次元領域におけるパターン形成について、現在モデルが持つ性質から、数値計算メッシュの異方性が出やすい事が問題となっている。フェーズフィールド型のモデルにおいて、ポテンシャルがバランスした状態でのゆっくりとした界面移動はメッシュの異方性に影響を受けやすく、ランダムメッシュの利用などの工夫が必要となる。ランダムメッシュの導入を含めた数値計算法の工夫を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度購入したGPGPUシミュレーション装置にGPUボードの追加を行う。これによってより大きな空間3次元問題をあつかうことが可能となる。また、実験家との共同作業によって実験系を構築するために、九州大学,ハンガリー,フランスの研究者との研究交流を行う予定である。
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