研究課題/領域番号 |
23540165
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
上山 大信 明治大学, 理工学部, 准教授 (20304389)
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キーワード | パターン形成 / 自己組織化 / 反応拡散系 / シミュレーション / 偏微分方程式 / GPGPU |
研究概要 |
本年度は昨年度に構築したGPGPUシミュレーション環境を活用し,3次元沈殿系のシミュレーション解析を中心とした研究を推進した。2次元領域における,沈殿系の核形成の頻度と最終パターンの関係は,前年度のシミュレーション解析によって明らかになっているが,3次元への拡張においてはテクニカルな問題が生じた。具体的にはGPGPU計算において,3次元計算領域を記憶する必要があるが,1台のGPGPUボード上のローカルメモリを超える記憶容量が必要となり,工夫無しにはGPGPU計算の高速性を発揮することができず,複数のGPGPUボードを用いた並列化等の施策が必要となる。本年度は,特に3次元計算に向けた並列化に関して,複数のGPGPUボードを用いた並列化を行った。これは,本研究内容に特化したものではなく,他の反応拡散系におけるシミュレーション解析にも適応可能である。 また,本研究の付加的な成果として,反応拡散系の持つ自己組織化機構を応用した自動メッシュ生成手法を提案し,論文公表を行った。これは,本研究においても中心的なテーマである自己組織化機構の解明に向けた研究成果を,シミュレーション等で利用するメッシュの生成に応用したものであり,これまでに無いものである。生成されたメッシュに関しては,複数の指標で評価され,既存の方法に比べて良好な性能を持つものであると確認された。今後,シミュレーション分野において活用されるものと期待しており,本研究のシミュレーションにおいても活用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元計算に向けた並列化に関して進展が有り,おおむね計画通り進行している。しかしながら,シミュレーション精度の向上が課題の一つであったが,提案モデル自身が持つ特性がシミュレーションの難しさにつながっており,理論的な検討が必要である。本年度はモデルの検討に関して理論的な研究推進を行うと共に,複数GPGPUボードを用いたシミュレーションの具体的なコーディングに関して研究を推進した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を継続しつつ,特に3次元問題を対象としたシミュレーション研究を行う。まず,前年度導入したGPGPUシミュレーション設備に,最新のGPGPUボードを追加する。これによって,複数世代のGPGPUボードが混在する環境となるが,適切に領域を分割することで対応し,精度の高いシミュレーションをより高速に行う。さらなる高速化の為にはボード間の通信の削減など,専門的な知識が必要となり,専門家の助言を得る予定である。 また,付加的な成果として公表したメッシュ生成手法で生成したメッシュを用いることで,計算メッシュの異方性を取り除いたシミュレーションを行う。 本研究の主要な目的である,ノイズの影響に関しては,これまでの研究によって,場に固定されたノイズと,時間的に変化するノイズとでは結果が大きく異なることが明らかになっている。外的なコントロールが行いやすい,時間に依存するノイズの影響を中心にシミュレーションを中心とした解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
最新のGPGPUボードを既存の設備に追加購入する。これによって,本研究において必要となる3次元計算に対応する。 また、実験家との共同作業によって実験系を構築するために,ハンガリーの研究者と研究連絡を行う。またモデルの数理解析に関しては,フランスの研究者との研究連絡を行い,モデルの持つ特徴を取り出したより簡潔なモデルの構築を行う予定である。
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