本年度は、初年度に導入したGPGPUシミュレーション環境にGPGPUボードを増設することから、より大きな計算を可能とする環境を確保し局所的パターン形成機構を持つ3次元沈殿系のシミュレーション解析を行った。また、実験的なアプローチをより進めるために、実験を専門とする共同研究者を海外から招聘し、実験のノウハウ等を得た。それによって、シミュレーション的なアプローチに加えて、実験的なアプローチが可能となり、モデルと実現象の比較検討が容易になった。 局所的パターン形成機構を持つパターン形成においては、限られた領域においてパターン形成が行われるため、計算領域をその形成領域の周辺に限ることが可能と考えられる。しかしながら、例えばリーゼガング型の沈殿現象においては境界条件は固定した上で、パターン形成領域が移動するため、その領域の切り抜きは容易ではない。当面は、比較的大きな計算領域の確保しシミュレーションを行うこととした。今後の研究においては、移動するパターン形成領域に追従した計算領域の確保による計算とその有効性の検証が求められ、そのことは理論的な解析の可能性を広げる事にもつながると考えられる。 本研究においては、局所性を活かした理論的なアプローチを目指しているが、移動と共に維持されるパターン形成機構において、その状況が時々刻々と変わることが困難につながっている。比較的簡単な系においてはパターン形成を主となる反応系と従となる反応系に分離できると考えられるため、上記の様なシミュレーションをベースとした研究の発展によって、解析的なアプローチの可能性を示す事が重要となるが、一定の研究の方向性を得ることができた。またパターン形成におけるノイズの影響は本研究の主要なテーマの一つであるが、空間的なノイズである空間非一様性に関する実験とシミュレーションを組み合わせた新たな研究への発展が生じた。
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