研究課題/領域番号 |
23540166
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 幸人 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員 (90596975)
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キーワード | 粒子法 / 連続体力学 / 解析力学 / 非平衡熱力学 |
研究概要 |
昨年度開発したPoisson括弧に基づく粒子法の計算アルゴリズムに基づき,実際に計算プログラムを作成して検証計算を行った.その結果Euler記述のHamiltonianに現れる空間積分を行う箇所で問題が生じることが判明した.具体的には,その空間積分は粒子半径に依存した空間格子を設定してその各立方体の中でGauss型の数値積分を行うことで実行しているが,それによってsymplectic性が破壊されることが問題となる.当初は高次のGauss積分を行うことによってその影響を抑えることができるのではないかと予測していたが,実際計算を行う中で数値積分の誤差が与える影響は予想以上であり計算の安定性にまで影響することが明らかになった.計算の安定性を保証するために何らかの物理的な考察に基づかない平滑化を導入することは本研究の目標から外れることになるため,一旦粒子法からは外れることになるがまずはEuler座標上でPoisson構造を保存するような空間離散化を考案し,その後その粒子法への拡張を試みる方向で研究を進めることとした.Poisson構造を保存する数値解法を検討した結果,本研究の前半で調査したGENERICの定式化に大阪大学の降旗准教授が開発された離散変分法を適用することによりそのような数値解法を開発できるのではないかという考えに至った.その第一歩として,二次元渦度方程式をGENERICの枠組みで定式化し,その基本的な構造を保存するような離散化を離散変分法を参考にして行うことで,エネルギーとエンストロフィーの保存性と散逸性をそのまま受け継ぐような数値解法を開発した.そこでは完全な離散式において保存性と散逸性が保証されるので先述のPoisson括弧に基づく粒子法のような問題は発生しないと考えている.来年度はこれを実際にコード化し実際に計算を行うことによってその有効性を検証する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Hamiltonianに基づく粒子法をEuler記述におけるPoisson構造に基づいて開発するという観点からは,現在までに開発したアルゴリズムでは予定した結果が得られないことが判明し,当初の計画通りの進捗が得られていない状況である.ただし,問題点を検討する中で,当初の計画からは外れるが,Euler座標上でPoisson構造を保存するような空間離散化への道筋について目処を付けることができ,実際にエネルギーとエンストロフィーを同時に保存する数値解法を考案することができた.これは現在の流体解析手法に新たな要素を加えるものであり,実用的にも意義がある成果であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した二次元渦度方程式に対する計算手法に基づきプログラムを実際に作成し検証計算を行うことによってその有効性を検討する.またこの手法をNavier-Stokes方程式などに拡張し,より一般的な流れの問題に適用できるような数値計算手法を開発することを目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入する予定のコンピュータの最新機種が発売され、そちらを購入することにしたが発売日が年度末に迫り今年度中の処理が難しくなったため。 H26年度の前半に予定したコンピュータを購入する予定である。
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