研究概要 |
次の結果を得た。G,H を多重辺やループを持たない無向グラフとする。G が含みうる互いに点素かつ H と同型な誘導部分グラフの最大個数を N(G,H) とする。またH*がグラフの族であるときN(G,H*)=max {N(G,H):H∈H* }と定義する。さらに、頂点数が s 以上のすべてのグラフ G について N(G,H*)≧n を満たすような最小の正整数 sをグラフの族 H* についての n-重複ラムゼー数 r(n,H*) と定義する。目標は与えられたH* に対して、主として n 十分大きい場合にr(n,H*) を決定することである。K_kを頂点数 k の完全グラフとする。また、グラフ G の補グラフを Gc と書く。先行研究の一つとしてグラフラムゼー理論における古典的な結果がある:n≧2のとき r(n, {K_3, {K_3}c}) = 5n が成り立つ[Burr-Erdos-Spencer,1975]。 2つのグラフG1, G2 に対する和および結合をそれぞれ G1∪G2, G1+G2 と書く。当該年度に得られた主定理は、次の通りである。定理1.1≦m≦k-2 とする。B*_{k,m} = { K_k, {K_k}c, K_m+{K_{k-m}}c, {K_m}c∪K_{k-m} } と置くとき、r(n, B*_{k,m}) = (2k-1-(m/k))n + O(1) が成り立つ。□定理1は、既に証明されていた m=1 の場合[Nakamigawa,2007]を拡張したものである。H はどのB*_{k,m} にも含まれないk頂点のグラフとする。B*(H)= { K_k, {K_k}c, H, Hc } と置く。このとき容易に、r(n, B*(H)) = (2k-1)n + O(1) が成り立つことがわかる。つまり、定理1はある意味で十分な一般性を備えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、本研究(ラムゼー型分割問題の研究)の研究対象を次のように分類している;(1)着色点集合、(2)グラフ、(3)その他の離散構造、の3つである。(1)着色点集合については、新たな進展はなかった。ただし、以下の(3)で述べる枠組みでの研究を開始した。(2)グラフについては、「研究実績の概要」で述べたように対象とするグラフの族をB*_{k,m} = { K_k, {K_k}c, K_m+{K_{k-m}}c, {K_m}c∪K_{k-m} } とした場合にr(n, B*_{k,m}) を漸近的に決定した。頂点数 k のグラフ全体からなるグラフの族を G*_k と書く。 今回の結果の系として、r(n, G*_4) の新たな上界 13n/2 + O(1) を得た。r(n, G*_4) の現在の下界は 6n + O(1) である。r(n, G*_4) の決定に向けて、r(n, G*_4) のより良い下界を探索する計算機実験を開始した。(3)その他の離散構造については、ハイパーグラフについて研究を開始した。一つの問題設定は次の通りである。b,k,mを正の整数とする。互いに辺素かつ同型なk辺からなるΔ-システムを必ずm組含むようなb-一様ハイパーグラフ(各辺の含む頂点数がbであるハイパーグラフ)の必要最小辺数を求めることを目標とする。b=1,2の場合はそれぞれ着色点集合,グラフを対象とすることに相当する。なお、関連する離散数学分野の研究として、(a)グラフ上の石交換に関する問題、(b)格子路に関する数え上げ問題、および(c)階層型ネットワーク上の経路に関する研究、についてそれぞれ進展があった。
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