研究概要 |
1. 重複誘導部分グラフラムゼー数 与えられたグラフの族 H* と正の整数 n に対して、重複誘導部分グラフラムゼー数 r(n,H*) を定義することができる。r(n,H*) は完全グラフのラムゼー数を一般化と考えられる。頂点数 k のグラフ H について,H*={K_k, K_kの補グラフ, H, Hの補グラフ} と置く。r(n, H*)を漸近的に決定した結果を論文としてまとめた(投稿中)。また、日本数学会秋季総合分科会において発表した。頂点数 k のグラフ全体からなるグラフの族を G_k と書く。 r(n, G_4) の漸近的決定を目標として、計算機によるr(n, G_4) の下界の探索を行った。現在までのところ、下界としては 6n+O(1) が最良であり、予想 r(n, G_4)=6n+O(1) を裏付ける結果となっている。 2. グラフの頂点集合の分割問題 k,mを正の整数とする。H を頂点数 k のグラフ,G を頂点数 n = km のグラフとする。G の頂点集合を m 個の k 点集合に分割するとき,各 k 点集合により誘導される m 個の部分グラフのうち,どのくらいの個数が H と同型になるかを考えたい。G における H の点素数区間 I(G,H) を { 0≦s≦m : ∃分割V(G) = V_1∪V_2∪…∪V_m, s.t. G[V_i] = H for 1≦i≦s, G[V_i] ≠ H for s<i≦m } と定義する。本研究では,主に H が完全グラフおよび完全2部グラフの場合について,与えられた G について I(G,H) の性質を研究し、応用数学合同研究集会において発表した。 3. 関連研究 離散研究分野の関連研究として、グラフ上の石交換、格子路の数え上げ、および階層型ネットワークの連結性に関して、研究論文計3件が刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書では、本研究の研究対象を次のように分類している;①着色点集合、②グラフ、③その他の離散構造、の3つである。平成24年度は②グラフに関する研究を進めたが、①着色点集合と③その他の離散構造については進展がなかった。このため、達成度として「(3)やや遅れている」とした。 ②グラフについては、「研究実績の概要」で述べたように対象とするグラフの族を H*={K_k, K_kの補グラフ, H, Hの補グラフ} とした場合に r(n, H*) を漸近的に決定し、論文としてまとめるとともに、国内会議にて発表した。また r(n, G_4) の決定に向けて、r(n, G_4) の下界を探索する計算機実験を行った。6n+O(1)≦r(n, G_4) であることがわかっているが、計算機実験の結果として次のことがわかった。グラフの族 H_4 = { K_4, K_4の補グラフ, K_{1,3}, K_{1,3}の補グラフ, K_4-e, K_4-eの補グラフ } と定義する。H_4⊂G_4 より、r(n, G_4)≦r(n, H_4) が成り立つ。r(n, H_4) についての実験結果は、r(n, H_4)=6n+O(1) を示唆している。これが正しければ、r(n, G_4)= 6n+O(1) が従う。このことから、今後の方針として r(n, H_4) = 6n+O(1)の証明を試みることが有力である。 また、G における H の点素数区間を I(G,H) とするとき I(G,H) の性質を研究した。特に、H が完全グラフおよび完全2部グラフの場合について、I(G,H) の性質を調べて、国内会議において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策について、研究対象である、①着色点集合、②グラフ、③その他の離散構造、に分けて述べる。 ①着色点集合については、その他の離散構造の研究に統合する形で研究を進めていく。 ②グラフについては、重複誘導部分グラフラムゼー数について得られた結果を2013年7月にハンガリー、ブダペストで開催される「エルデシュ生誕100年会議(Erdos Centenial Conference)」においてポスター発表することを予定している。また、対象とするグラフの族を拡張して、研究内容を発展させる。当面の未解決課題として、r(n, H_4), r(n, G_4) を漸近的に決定することが挙げられる。さらに、k≧5 に対して r(n, G_k) についての手がかりを得ることが挙げられる。 ③その他の離散構造については、平成23年度に開始したハイパーグラフのΔ-システムへの分割についての研究を再度見直す。現在までに得られている結果を整理し、課題を明確にすることが挙げられる。 また、上記の主テーマに加えて関連する離散数学分野の研究として、(a)グラフ上の石移動・石交換に関する研究、(b)階層型ネットワーク上の経路に関する研究、を推進する。
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