(1)本研究では、「大成算経」の現代語訳、英訳を順次完成発表することであった。その準備として、『綴術算経』の英訳を2012年に刊行した。 (2)2014年8月に建部賢弘生誕350周年記念の国際研究集会を御茶ノ水女子大学で開催した。素の英文の報告集を日本数学会から出版することが決まり、研究代表者(森本)および共同研究者(小川束)は、その編集作業に集中した。この報告書の書名は、Mathematics of Takebe Katahiro and History of Mathematics in East Asia と決まり、Advanced Studies of Pure Mathematics 叢書の一冊として近く出版される予定である。 (3)研究代表者は、大成算経のうち、巻之十七の全題解、巻之十九の演段例上の英訳を上記の報告集に載せることにして、英訳作業を2015年度に行った。ほぼ完成したが、まだ推敲に時間を要することと思う。巻之十七(全題解)は、見題篇、隠題篇、伏題篇、潜題篇に分かれ、そのうちの伏題篇では、関孝和の終結式、行列式の理論が述べられている。巻之十九(演題例上)では、隠題および伏題の15問の例題が提示されている。換式と交乗法(行列式)を使った終結式が、実際に応用されている高度の内容である。18世紀の初頭に日本で刊行されたこの書物はまだ英文で紹介されたことがなく、英訳の発表は有意義なものと考えている。共同研究者は、建部賢弘に関するサーヴェイ記事および大成算経巻之十二の英訳を、上記報告集のために準備している。 (4)東アジアの数学史の研究者との連帯を深めるために、韓国ソウル、中国海南島に出張した。また、共同研究者の主催する国際研究集会(四日市市で開催)の実施に協力した。
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