研究課題/領域番号 |
23540172
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
上村 稔大 関西大学, システム理工学部, 教授 (30285332)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | Dirichlet 形式 / マルコフ過程 / 保存性 |
研究概要 |
交付申請書に記載した本年度の「研究実施計画」が以下のように達成された.1.ユークリッド空間上で定義された二階の非局所型作用素に対して,それがいつ純飛躍型マルコフ過程に対応するかについて,その解析的対応物について分析することに成功した.具体的には,Lp-Liouville 性と呼ばれる性質を飛躍測度(Levy 測度)の概念を用いて決定した.2.空間がより一般の局所コンパクトな可分距離空間上で定義された純飛躍型 Dirichlet 形式を考え,それが(純飛躍型)マルコフ過程を定める条件を考察した.飛躍測度が,ある一定の条件を持てば,Dirichlet 形式が正則となり,従って,いつでもマルコフ過程が対応することが分かった.更にはそのとき,対応するマルコフ過程が保存的である条件を与える事に成功した.上記 1,2は共に J. Masamune 氏との共同研究において示し,1はドイツで出版されている数学雑誌,2.はフランスで出版されている数学雑誌に発表された.Livioulle 性は,従来は二階の偏微分作用素,とくに連続型マルコフ過程に対して考えられていた概念であるが,今回は,それが非局所型作用素に対しても,そのような性質が考察されうることを示した画期的論文である.また,保存性は,確率過程論研究において,貴補填記考察の対象であったが,これまでは,個別にその性質を導出する結果は多くの研究者によってなされていたが,今回は,飛躍型 Dirichlet 形式に対応するような,マルコフ過程一般に対して,統一的に示すことが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
飛躍型Dirichlet 形式の分析に思いの外時間が取られすぎ,連続部分を含んだ,所謂,ジャンプ拡散過程の Dirichlet 形式の考察に手が回らなかった.これは,以前に指摘していたとおりであるが,飛躍型 Dirichlet 形式の解析に,従前の古典的な解析学の理論がほとんど通用しなかったためである.これ自身は,保存性の分析には織り込んでいたはずであるが,予想しなかった"大きな飛躍率"(big jump rates)とでも呼ぶべき,瞬間に,遠くに飛躍する測度の発散のオーダーの評価の困難さが現れた.この評価に手間取ったため,目的達成に,若干遅れが生じたように思う.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に達成された結果を踏まえ,より詳しい分析を行う必要が生じた.勿論,交付申請書に記載した「研究計画」そのものには変更はないが, 'big jump rates' の扱いについては,より慎重に取り扱う必要があると思われる.これ関しては,計画通り,ドイツドレスデン工科大学の R.L. Schilling 氏と共同研究をより積極的に進めることとする.氏は,飛躍をもつマルコフ過程の解析的分析の第一人者であるので,氏を日本に招待したり,また私自身がドイツに出向いて,議論をより活発に進めていく必要がある.そのための旅費が必要となる.また,併せて関連する専門書の購入を検討している.
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次年度の研究費の使用計画 |
飛躍型マルコフ過程の研究を推し進めて,連続部分とを組み合わせた,ジャンプ拡散過程を構成するDirichlet形式の構成を目指していく.さらには,現段階で得られている結果を国際研究会で発表するため,ポーランドで開催予定の「第6回国際研究会:確率解析とその応用」に参加し,発表を予定している.ところで,昨年は東日本大震災が発生による影響のため,企画していた研究会を開くことが出来なかった.また,その際に招聘予定であった外国の研究者の招聘を断念した経緯があるため,その分の繰り越しが生じてしまった.次年度以降に,その研究会を再度企画・開催し,改めて招聘する予定である.
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