研究課題/領域番号 |
23540173
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
大江 貴司 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (90258210)
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研究分担者 |
池畠 優 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90202910)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 逆問題 / 数値解析 / 偏微分方程式 / 応用数学 |
研究概要 |
平成23年度は主として、波動方程式のソース逆問題の直接的数値解法の開発とその数値的実装を中心に研究を進めた。ソース項として、地震や固定音源の数理モデルに対応するような、位置は固定であるが強度が時間的に変動する数個の点状ソースが存在する場合を考え、重みつき境界積分の一種である reciprocity gap functionalを利用した数値解法として強度の時間変動の即時的な追跡が可能であるような手法について研究した。その結果、3種類のreciprocity gap functional を利用することにより、ほぼ即時的に点ソースの位置および強度を追跡可能な数値解法の開発に成功した。さらに開発した手法の有効性を確認するため数値実験による検証を行い、1%程度のノイズの下では3個程度であればそれを分離し、十分な精度で位置および強度を追跡できることが確認できた。Reciprocity gap functional を利用した手法として強度の時間変化を即時的に追跡することが可能なものはこれまで知られておらず、今回開発した手法はその問題点を解決する方法を提案したものであり、意義のあるのもと考える。本実績については国際的論文誌 Inverse Problems に発表するとともに、国内の研究集会で口頭発表を行った。なお研究の過程で、点ソースの位置が固定されたものでなく時間的に移動するような場合について、強度の時間変化と同時に位置の移動も即時的に推定可能な手法の開発が新たな問題として提起された。この問題は乗用車のような移動する音源の追跡等の数理モデルであり、重要な問題と考えられる。現在、上記研究成果がどの程度適用可能か、またそのままでは困難な場合、改良の余地があるかについて検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で取り上げる偏微分方程式の逆問題の数値解法の大まかな分類として、囲い込み法および重みつき境界積分に基づく手法があるが、波動方程式のソース逆問題の直接的数値解法として重みつき境界積分に基づく手法の方面から一つの成果を得ることができた。その一方、Helmholtz 方程式の境界逆問題に対する囲い込み法に基づく数値解法については、理論的進展があったものの数値解法の実装面での研究の展開を進めることが余りできなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績のところでも述べた結果をもとに、波動方程式のソース逆問題について、新たに提起された問題である強度の時間変化のみならず位置の移動も同時に即時的に推定可能な解法の開発を進める。また、拡散方程式および移流拡散方程式のソース逆問題について点ソースに位置が固定されている場合に対する強度および位置の即時推定に取り組む。一方で、前年度あまり進展の見られなかったHelmholtz 方程式の境界逆問題に対する囲い込み法に基づく数値解法についての展開を進める。特に、複数の方向からの入射波に対する散乱波を組み合わせた囲い込み法について数値的観点から研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
その他として予定していた研究資料複写費および論文投稿料がいずれも発生しなかったため、次年度使用額が発生した。当該研究費については24年度において旅費に合わせて使用する計画である。
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