研究課題
本年度は、主として3次元波動方程式におけるソース逆問題、特に複数の双極子が領域内を移動している場合にその位置と双極子モーメントを推定する数値的手法の開発、および数値実験を行った。その結果、これまでに開発した点波源に対する推定手法を拡張することにより、双極子の移動速度が小さい場合に対し、その位置および双極子モーメントのうち2方向の値の即時的推定手法の開発に成功した。これまで双極子の推定問題に関する研究はいくつかあるが、波動方程式のようなダイナミクスを持つ方程式に関するものは少ない。また即時的な推定手法に関する研究は皆無であることから、本研究成果は画期的な結果であると考える。なお、本研究成果については、2014年11月に行われた日中韓フォーサイトプログラム研究集会「Conference on Modeling and Computation of Applied Inverse Problems」、および2015年1月に開催された京都大学数理解析研究所共同研究集会「微分方程式の逆問題とその周辺」において発表した。今後は、今回推定することができなかった双極子モーメントの残り1つの方向の推定手法、また双極子の移動速度が速い場合に対する推定手法の開発について研究を進めていきたいと考えている。なお、本年度を予定していた波動方程式のソース逆問題に対する Kohn-Vogelius の汎関数を用いた解法の研究については、波動方程式の非同次境界値問題に対する高精度の数値解法の開発に手間取り、大きな進展を得ることができなかった。しかし、年度の最後になって、満足のいく精度をもった解法を開発することができた。今後は、これを利用してKohn-Vogelius の汎関数を用いた解法の開発と検証を進めていきたいと考えている。
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MI Lecture Note “Inverse problems for practice, the present and the future”
巻: 54 ページ: 67-76