研究課題/領域番号 |
23540175
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松久 隆 茨城工業高等専門学校, 自然科学科, 講師 (40219473)
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キーワード | 行動予測提携 / 情報交換過程 / 経営者ー労働者モデル / 倫理崩壊 / 共有知識 / 合意形成 / 多重様相論理 / 期待限界費用 |
研究概要 |
平成24年度は研究目標である「行動予測提携」の存在と提携の内部の主体の認識構造の解明に関して決定的な結果を得たことを始め、「経営者ー労働者モデル」における倫理崩壊解消問題に関しては新たな観点からの研究の端緒を掴むことができた。更に、上記の「行動予測提携形成」において重要な役割を担う「情報交換過程モデル」(コミュニケーション・モデル)に関して様相論理学からの基礎づけを試みた。具体的には以下の結果を得た。 課題(1) 「行動予測提携形成」について:情報分割構造をもつプレイヤー間における「情報交換過程モデル」を構築し、無限回の情報交換による行動予測修正過程を確率過程として定式化し、その極限として行動予測提携が形成されることを示した。何よりもその証明において鍵となる「分解定理」を解明することが出来た。これは新たな研究への出発点となるものと期待されるが、平成24年度の研究では「行動予測」が共有知識にならない場合でも「行動予測提携」は存在することを示すことが出来た。これにより認識論的側面からもこの「行動予測提携」の解概念は「ナッシュ均衡解」の拡張となることが分かった。 課題(2) 「経営者ー労働者モデル」における倫理崩壊解消問題:経営者および労働者が情報分割構造を持つ形で「不確実性下の経営者ー労働者モデル」を構築し、彼らの期待限界費用が共有知識になる場合に倫理崩壊が起こらないことを示した。同時に、(1)で導入した「情報交換過程モデル」をこれに適用することで、確率過程として期待限界費用の修正を定式化し、その極限が必ず一致し、倫理崩壊が解消することも示した。 課題(3 )形式体系としての基礎づけ: 上記2つのモデルの基礎となる形式論理体系「CS5n」を構築し、この論理のモデルとして上記「情報交換過程モデル」が構成可能であり、さらにこのモデル全体と論理体系「CS5n」との間の完全性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度から継続して積極的な国際会議およびセミナー発表を行い、多くの国外研究者との研究討論および交流を通じて有益な研究情報や刺激と得るだけでなく、新たな問題の発見や共同研究の端緒を開くことが出来た。これが研究意識を大きく向上させ成果達成に結びついた。 課題(1) 「行動予測提携形成」についてはほぼ完了した。実際、情報分割構造をもつプレイヤー間における「情報交換過程モデル」を構築し、情報交換による行動予測修正過程を確率過程として定式化した。平成24年度では「行動予測」が共有知識にならない場合でも「行動予測提携」が存在することを示すことが出来た。この成果は「Communication Leading to Coalition Nash Equilibrium I」 Proceedings of KES-AMSTA 2013, Hue (Vietnam). Advanced Methods and Technologies for Agent and Multi-Agent Systems Vol.252 (2013) pp.146-155で公表した。 課題(2) 倫理崩壊解消問題については以下の成果を得た:経営者および労働者が情報分割構造を持つ形で「不確実性下の経営者ー労働者モデル」について、彼らの期待限界費用が共有知識になる場合に倫理崩壊が起こらないことを示した。 課題(3) 形式体系としての基礎づけ:「情報交換過程モデル」をモデルとしてもつ形式論理体系「CS5n」を構築し、そのモデル全体との間の完全性を示した。この成果は「Communication Logic on Multi-Modal Logic S5n」Advances in Intelligent Systems and Computing Vol.179 (2013) pp 197-206で公刊した。
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今後の研究の推進方策 |
当研究は理論研究なので、個人研究を軸に据えて、引き続き国際会議発表・他大学研究所等での研究発表などで通して国際共同研究・国際情報交換活動を行う。具体的には以下の計画で進める。 課題(1) 「行動予測提携形成」に関しては今まで得られた成果を完成版として学術論文「Network Communication Forming Coalition」を纏め、国際学術雑誌に公刊する。 課題(2) 「経営者ー労働者モデル」における倫理崩壊解消問題:新たに努力水準予想の概念を導入し、この予想情報の共有の観点から倫理崩壊の問題解明を進める。そこでの鍵となるのは課題(1)で解明した「分解定理」である。また、この手法を医療施設の最適配置問題等の空間地理学および公共医療問題への応用を検討する。 課題(3) 形式体系としての基礎づけ:この課題をさらに進展させることは現時点では、時間的にもまた技術的にもまだ準備不足であることがわかったので、次年度以降の研究課題とすることにした。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議・他大学研究所等での研究発表などの旅費に使用する。平成25年度内で研究成果発表を予定している国際会議のは以下の通り。 1. ICMP 2013(ソウル)4月, 2. ACIS2013(台中)4月, 3. IABE 2013 (Bangkok)6月, 3. CeNET2013(上海)7月, 4.ISORA 2013(黄山、中国), 5. ICSS2013 (Wroclaw), 6. ICCCI2013 (Kraiova, Rumania) ほか。
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