研究課題/領域番号 |
23540178
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本多 尚文 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00238817)
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研究分担者 |
内田 素夫 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10221805)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 超局所解析 / 完全WKB解析 |
研究概要 |
本年度は、まず、京都大学数理解析研究においてシンポジウム "Recent development of micro-local analysis for the theory of asymptotic analysis" (研究代表者: 本多尚文=本研究課題の研究代表者)を行ない、超局所解析の観点から漸近解析及びWKB解析の様々な側面を検討した。国内外から当該分野の専門家(50名程度)があつまり、最新の研究成果の発表及び討論を行った。このシンポジウムにより、当該関連分野の研究者に多くの知見をもたらすと伴に、本研究課題の遂行のための多くの知識が得られた。なお、このシンポジウムで得られた知見は数理解析研究所からRIMS Koukyuuroku Bessatsuとして発刊される。 本年度の当該研究課題に関連する大きな成果として、一般のパンルベ階層系に対しインスタントン解の構成を一般的なフレームワーク(他のパンルベ階層系に対しても適用可能な)で構成したことが挙げられる。これは青木貴史(近畿大学)および梅田陽子(北大)との共同研究で得られた成果である。このインスタントン解は解の接続問題を扱うときの基底となるもので、これが得られたことにより、古典的パンルベ方程式に対して青木、河合、竹井らによって得られている様々な成果が、一般のパンルベ階層系に対しても得られることになる。特に、線形方程式の時と同様な仮想変り点や謂る新らしいストークス曲線のなす幾何を考察することが可能となり、これは、本研究課題の今後の重要な課題と言える。 また、超局所解析とWKB解析が関連する1つの応用として、数理解析研の河合とS-matrixのランダウ中西多様体の構造について研究を行った。2次元のトラズブリッジにおける同多様体について多くの成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は超局所解析の観点からWKB解析に関連する諸問題を考察し、新たな知見を得ることが目的である。初年度として、研究集会の開催等により本研究課題のみならず当該分野において重要な多くの新たな知見が得られ、また、当該分野の研究者によってそれらの知見を共有出来たことは、重要な意義があると考えられる。また、この研究課題においてもインスタントン解の構成やS-Matrixへの応用等の重要な成果が得られている。これらは、この研究課題における旅費等を使い、頻繁かつ密な研究連絡によって得られたものであり、本研究課題の初年度の遂行状況及びその成果としては極めて妥当なものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要でも述べたように、既に一般のパンルベ階層系に対してインスタントン解の構成を可能とするようなフレームワークを構成した。このフレームワークを用いることで他のパンルベ階層系(P2,P3,P4等)に対してもインスタントン解を構成する。これらには共通の代数的構造があり、この構造が如何に仮想変り点やストークス曲線等のストークス幾何に対して反映されるか研究する。これらを研究する上で重要な事実は、これらの幾何はある種の変形保存系によって統制されていることであり、これらの変形保存系は線形の方程式である。従って、線形方程式におけるストークス幾何において特異性の伝搬等の超局所解析の理論が重要な役割りを果しているように、この場合においても超局所解析と密接な関連があると考えられる。このパンルベ階層系のもつ代数的構造と超局所解析の理論の結びつきを確立することが重要な研究の課題となると言える。特に、線形の場合におけるストークス幾何と特異性の伝搬について更に詳細な結果を得ることで、パンルベ階層系に対しても理論を発展させることが重要であると考えられる。 また、超局所解析とWKB解析が交差する応用例として、トラスブリッジに対するランダウ中西多様体の構造、および、ランダウ積分を考察する。既に2次元の場合は、ランダウ中西多様体がトラスブリッジのサイズが大きくなったときに安定することが示されている。従って、積分自体も有限個の関数のある種のベキで表現されることが推測される。この推測の正当性を超局所解析やWKB解析での知見を用いて確立することが1つの目標となる。 これらを遂行する上では、これらの研究の専門家との密接な研究打合せが重要であり、特に近畿大学の青木、数理解析研の河合、竹井らとの打ち合わせを今後も頻繁に行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の次年度の研究費の主な用途は、上記の課題を遂行する為に多くの研究者と研究打合せを行うことにある。WKB解析に関連して、近畿大学の青木貴史、京都大学数理解析研究所の河合隆裕、竹井義次らと密な研究連絡を行う。また、超局所解析の観点からは、大阪大学の内田素夫(研究分担者)、 イタリアパドバ大学のLuca Prelli、数理解析研究所のGiovanni Morando等との研究打ち合わせを頻繁に行う。また、来年度も数理解析研究所において超局所解析と漸近解析に関するシンポジウムを行う予定である(当該研究課題の研究代表者がシンポジウムの副代表者)。この際に研究発表を行う研究者に対する旅費の補助、及び、参加者との研究打合せの為に旅費を使用する予定である。 なお、前年度内田素夫と予定していた研究打ち合わせが、都合により1回ほど出来なくなり約17万円の未使用分が発生したが、本年度の内田素夫との研究打ち合わせで使用する予定である。
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