1. b-関数、Capelli恒等式に関する研究成果: 平成23年度から26年度までに引き続き、平成27年度も概均質ベクトル空間のb-関数に関係するCapelli恒等式(奇数型Capelli恒等式) の研究を中心に行った。平成26年度までに、普通の(成分に関係式のない) 行列や、対称行列、交代行列の現れる奇数型Capelli恒等式を得たが、平成27年度には、これらを放物型概均質ベクトル空間に付随するCapelli 恒等式、および、これを用いたb-関数としてまとめた。これまで、b-関数をCapelli恒等式を用いて計算する結果は散発的にはあったが、リー代数の表現論の視点から見て重要な系列に対して、まとまった結果である点が重要である。この結果は鹿児島大学での集会で発表し、また、この結果を含む論文の投稿を準備中である。 2. 対称対の冪零軌道に関する研究成果: b-関数との関連が期待される対称対の冪零軌道について、軌道の隣接関係や、数え上げなどの組合せ論的性質、既約加群の随伴多様体との関係など、これまでの結果をまとめた共著論文が受理された。 3. 複素鏡映群に関する研究成果: sl(2)の表現と深く関わる、可換環におけるレフシェッツ性という性質があるが、複素鏡映群の余不変式環のレフシェッツ性についての研究が進展した。初めは計算機を用いてレフシェッツ性を持つことの証明を与えていたが、代数的に証明を与える目途がたちつつある。 4. 平成27年度の研究費の使用: 旅費については、表現論シンポジウム、日本数学会秋季総合分科会をはじめとする研究集会への参加のために使用した。また、表現論に関する図書の購入にも使用した。
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