研究課題/領域番号 |
23540180
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
中里 博 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (10188922)
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キーワード | 数域 / 作用素 / ヒルベルト空間 |
研究概要 |
ヒルベルト空間とクライン空間の線形作用素を数域という特性量を用いて解析し、量子計算における誤り訂正や核磁気共鳴装置の制御など関連する応用への基礎づくりを行うという目標に沿って研究を進め、成果を2012年7月9日より12日まで、台湾の高雄市の国立中山大学で開催された国際研究集会 11th WONRAで、発表したほか、国内では、2012年12月東京で開催の研究集会で発表した。目標達成に向けて、力学系と結びついた作用素の数域や高次元数域を決定することができた。高次元数域の境界の方程式を具体的に求めることができたので、これを用いて量子計算における誤り訂正への応用が具体化されるものと期待できる。成果は論文としては、線形解析の分野の著名な専門誌 Linear Algebra and Its Applications 誌に、2012年から、2013年第一4半期に3編、数学解析の著名誌Journal of Mathematical Analysis and Applications に1編、線形代数学の専門誌 Electronic Journal of Linear Algebra に1編、発表した。目標としていた高次元数域の解析のほか、同時数域の解明に関しても、発展的な形で研究の前進があった。共同研究を行っている台湾の東呉大学(台北)の簡茂丁教授や、ポルトガルのコインブラ大学のBebiano教授との研究は順調に進んでおり、上記のような成果のほか、コインブラ大学のテキストとして研究成果を発表する予定のものもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果については、国内外の研究集会で発表しているほか、論文としても順調に成果の発表を行っている。論文掲載雑誌は、例えば Journal of Mathematical Analysis and Applications 誌は、5-year Impact Factor 1.305, Linear Algebra and Its Applications 誌は、5-year Impact Factor 1.1011であり、それらは基礎解析の研究とその応用を扱っている専門誌としては、国際的な平均的水準をクリアし、若干それよりも高いと言えよう。高次元数域など、量子計算における誤りの訂正に関連すると考えられる成果も順調に得られている。クライン空間の作用素の数域に関しては、関連する積の形の一般化数域について、コインブラ大学のグループとの共同研究で成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展にともない、量子計算に伴う誤り訂正への応用といった初期の目標のほかに同時数域の研究や力学系への応用などの点でも進展があったので、当初の目標の達成を図りつつ、これらの研究も行っていきたい。台湾の簡茂丁教授との共同研究など、これまで協力関係にあった研究者とも引き続き協力して成果をあげたい。成果は、京都、札幌などの研究集会で発表するほか、数編の論文の形でも発表したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究経費使用に関しては、平成25年1月上旬に開催が予定され、参加を予定していた国際研究集会(共同研究者のひとりである、ポルトガルのコインブラ大学の Bebiano教授が開催主催者であったが、この主催者の病気で)延期となった。これにともない、この研究集会の平成25年度の開催を想定して、10万円を少し上回る額を繰越しすることに方針を変えた。平成25年度には、平成24年の残に当たる11万4678円と平成25年度分の40万円の計51万4678円を報告書作成費7万4678円、謝金6万円、物品8万円、旅費30万円という形で、使用し、研究のための情報交換や成果発表などにあてたい。
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