ヒルベルト空間における線形作用素の数域の境界の方程式を求めることに関して大きな前進があった。特に、巡回型のシフト行列の数域の境界方程式については、代数曲線論的方法により、関係する代数曲線の種数の最小値が1であることを示した。また、クレイン空間の作用素の数域に関連しては、行列要素の積のなす領域の解明を行い、ポルトガルのコインブラ大学の教科書シリーズに共著者のBebiano教授らとともに冊子掲載型の論文として出版した。数域の形状を求める問題と双極型の偏微分方程式との間に深い関係があることが3年間の研究の成果として明らかにされた。核磁気共鳴装置の制御や分光学への応用に関しては、数域の境界の方程式の解析方法を前進させることができたので、この点で応用にむけての基礎を進めることができた。中心力力学系の解析への数域の応用や数理天文学の古典的モデルの解釈など計画当初は予期していなかったことが発見されるなどのあたらしい展開もあった。研究の進め方としては、台湾の東呉大学の簡茂丁教授との共同研究が順調に前進し、高次元数域と植物の開花時期の問題との関連などで、桜の開花を連想させる図の登場など数域の研究が広い応用を持つことを伺わせる例に出会うこともできた。最終年度には、モンゴルの国立大学の Undrakh研究員との研究も開始し、新たな発展が見込める。一般化数域を古典的な数域に帰着させる問題や、同時数域の凸性についての新結果など、3年間の研究で、成果を15の論文と1つの冊子として成果発表を行った。
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