研究課題/領域番号 |
23540183
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松本 裕行 山形大学, 理学部, 教授 (00190538)
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研究分担者 |
谷口 説男 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (70155208)
神保 雅一 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (50103049)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 確率解析 / ベッセル過程 / ベッセル関数 / 無限分解可能分布 |
研究概要 |
ベッセル過程の到達時刻の確率分布について,分布関数および確率密度関数の具体形を求めるという問題に手がかりを得て,濱名裕治氏(熊本大)との共同研究の形で研究を進めた. 確率分布のラプラス変換が変形ベッセル関数の比で与えられることは良く知られていたが,出発点の方が原点から遠い場合は自然境界である無限遠点を扱う必要があるため到達時刻に関する研究は少なかった.ベッセル関数の比に対して,ラプラス逆変換が行える形の表現を与えて実際に逆変換を実行することで,確率分布の具体形を与えた.さらに,この結果を用いると長時間漸近挙動が正確に得られることを示した.これらの結果は論文にまとめて,既に出版が決定している. 同様の方法により,到達時刻の確率密度関数に対しても具体的な表現と正確な長時間漸近挙動を与えることができると考えて,現在研究中である.一部の場合には,漸近挙動の主要項だけではなく,漸近挙動もできると考えている.結果は出そろいつつあるので,近日中に論文にまとめ投稿する予定である. 拡散過程の到達時刻の確率分布が無限分解可能であることが知られているので,ベッセル過程の場合にレヴィ測度の表現を与える問題が考えられる.レヴィ測度のラプラス変換も,形は異なるが,ベッセル関数の比で与えられるので,上述の方法が使える可能性があると考えて研究を進めている.さらに,ブラウン運動の Wiener-Sausage の体積の期待値に関してもベッセル過程の到達時刻に関する結果を応用することができ,漸近挙動に関する結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ベッセル過程の到達時刻の分布に関する研究は,出発点の方が原点よりも遠い場合は,Byczkowski などの研究以外があるくらいで,正確な漸近挙動などについては結果がなかった.別の研究に関して濱名氏と研究連絡や議論を行っていて,進展の足がかりをつかむことができた.時間パラメータを大きくしたときの漸近挙動が応用の際は重要になるが,我々の得た分布関数の表現を用いると正確に主要項を求めることができるし,未だ制限付きだが,漸近展開までできる場合があることも分かった.
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今後の研究の推進方策 |
ベッセル過程の到達時刻に関しては,確率密度関数の具体形と長時間漸近挙動に関してほぼ結果は出せているので,早急に精査して論文にまとめ投稿したいと考えている.レヴィ測度の表現などについての研究が,平成24年度の主要な研究課題となる.
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次年度の研究費の使用計画 |
ベッセル過程の到達時刻に関する研究は濱名氏との共同研究であり,研究連絡などに旅費を使用する. 正定値行列の空間上のラプラシアンの研究に関しては,計算機で種々の量を計算する必要があり神保雅一氏(名古屋大),脇克志氏(山形大),平尾将剛氏(東京女大)などの援助を得て研究を進めたい.研究連絡,共同研究のために旅費を使用する. 確率解析一般に関して谷口説男氏(九州大)と研究連絡を密に取りながら研究を進めるため旅費を使用する.その他,国内の研究集会などに参加して情報収集,研究連絡などを行うために,旅費を使用する. 最新の研究結果を役立てるために,書籍および講義録を購入するために,物品費を使用する.
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