研究課題/領域番号 |
23540187
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 仁 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 特任助教 (70422392)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 多重Morreyノルム / 多重線形分数積分作用素 / Olsenの加重付きノルム不等式 / 二つの加重付きノルム不等式 / 斉次測度空間 |
研究概要 |
本研究は,Morrey型ノルムによる分数積分作用素等の加重付きノルム不等式の改良,多重劣線形最大作用素の視点に立つ局所的加重付きノルム不等式の開発,同視点に立つKakeya最大作用素の加重付きノルム不等式の改善の三つをその目的としています.本年度は,まず多重Morreyノルムを用いて多重線形分数積分作用素に対するOlsenの加重付きノルム不等式についての研究を実施しました.この研究は計画通りに進めることができ,多重線形分数積分作用素に対するOlsenの加重付きノルム不等式成立のための加重に対する自然な一つの十分条件を与えることに成功しました.この結果はすでに出版済です.次に,計画を前倒しし,背景の空間の拡張を図りました.順距離とdoubling測度を備えた空間を〈斉次測度空間〉と呼びます.当初の計画では,背景の空間をこの斉次測度空間へ拡張することを意図していました.しかし,実際には、doubling測度を備えたユークリッド空間上への拡張として発表しました.これは一見,大きな制限のようにも見えます.しかし,実際には適切な知識を持つ者であれば,容易に我々の結果がそのまま斉次測度空間上で成立することが分かる,本質的に見やすさのために選んだ制限にすぎません。さらに,この結果では,加重を測度へ拡張することにも成功しています.これは,今までの手法を捨て,新しい手法を適用する必要があり,応用上にも重要な進展であると考えています.最後に,加重の測度への拡張を調べて行く中で,これまでにあまり研究されてこなかった,あるパラメータの範囲における,分数積分作用素に対する加重付きノルム不等式の理論を知ることができました.これは一つの加重に対する理論です.私は,この理論とこれまでに得た知見とを合わせ,対応するパラメータの範囲における,二つの加重に対するノルム不等式の研究を進めることに成功しました.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初の予定通りほぼ進展していると思われます.
|
今後の研究の推進方策 |
doubling測度に変えてgrowth条件を満たす測度を備えた空間は〈非斉次測度空間〉と呼ばれます.私は,背景の空間をさらにこの非斉次測度空間へ拡張することを計画しています.非斉次測度空間上でも,ユークリッド空間の2進立方体に対応する集合が構成されています.しかし,それは,今のままでは我々の手法には適用されない不十分なものです.そのため,この研究においては,先ず我々の手法に適用可能な2進立方体を非斉次測度空間上に構成する必要があります.ところが,近年のこの分野の進展にはすばらしいものがあります!現在では,2進立方体(dyadic cube)に変えて,主立方体(principal cube)を用いた解析が進められ,その有用正が認識されています.この手法は,私の研究にも適用可能であると思っており,その成功を信じています.また,Morrey空間上で加重の理論を展開する上で,加重付きノルム不等式成立のための,加重に対する十分条件は,比較的容易に得られます.しかし,その条件が必要であることを示すことは,全くできていません.我々は,是非,個こに一つの風穴を開け,加重の理論の完全性のために寄与したいと強く願っています.
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画に沿って適切に使用したいと存じます.
|