研究課題/領域番号 |
23540187
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 仁 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (70422392)
|
キーワード | 正作用素 / 分数積分作用素 / martinngale / 方向極大作用素 / 加重付ノルム不等式 |
研究概要 |
本研究は,①Morrey型ノルムによる分数積分作用素等の加重付きノルム不等式の改良,②多重劣線形最大作用素の視点に立つ局所的加重付きノルム不等式の開発,③同視点に立つKakeya最大作用素の加重付きノルム不等式の改善の三つをその目的とします. 正作用素とは,分数積分作用素を離散化したものです.分数積分作用素を離散化し評価するという手法は,私が近年用いているものであります.この離散化の手法を,分数積分作用素よりもさらに特異性の高い特異積分作用素にも適用できないかということは,誰もが思い至ることであって,私も試みてはいましたが,困難であって成功できずにおりました.ところが,Petermichl, Nazarov, Treil, Volberg等は,確率論の力を借りて,この困難をみごと克服し,これに成功しました.この特異積分作用素の離散化による解析は,特に加重の理論の精密化に寄与しており,近年もっとも活発に研究されているテーマとなっています.そして,この研究が一つの動機となって,2進立方体に依拠した離散化の理論の再認識とその復権とは一つのトピックを成しています. 24年度に私は,この発展しつつある理論を,2進立方体が持っている構造を含む, より一般なmartingaleの枠組みにおいて展開しました.この研究は,本研究の一つの目的である,「Olsenの不等式の背景の空間を非斉次測度空間へ拡張すること」に深い関連を持ちます.最新の結果として,正作用素が有界となるための,その核が満たすべき必要十分条件を与えることに成功しました.すなわち,有界となるための核の完全な特徴付けに成功しました. さらに,この研究とは独立に,研究目的の③に関連して,2次元座標平面上で方向極大関数に対する動径的加重月ノルム不等式が成立するための加重に対する一つの十分条件を与えることにも成功しました.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは,僅かながら異なっているが,それは研究推進の過程で生じたもので,大局的には当初意図した方向に進んでいると思われます.
|
今後の研究の推進方策 |
24年度に得られた正作用素に対する研究結果に関連して,正作用素の加重付ノルム不等式が成立するための加重に対する特徴付けを与える研究を進めます.この研究はあるパラメターについてはすでに知られています.しかし,可能性のある他のパラメターについては未だ未知であり,私がこれまでに用いてきた手法を駆使することで,その特徴付けを成功させたいと思います. また,24年度に取り組んだ,martingaleの枠組みにおける正作用素・最大作用素に対する加重付ノルム不等式の評価を,より精密化する研究を進めます.この研究は,分数積分作用素等について他の研究者によって近年進められている結果を,おより一般な我々の枠組みにおいても検証してみようというものであります.この研究により,我々が提案したパラダイムの正当化が可能であると信じます. 最後に,本研究の一つの目的である,「Olsenの不等式の背景の空間を非斉次測度空間へ拡張すること」に取り組みたいと思います.現在十分な知見の蓄積がなされたと考えており,成功できると信じています.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究によってこれまでに得られた成果を紹介するため,また,海外の関連研究の進展状況を知るために,外国旅費の使用を計画しています.さらに,国内の研究者に対して,研究成果の発表等のための国内旅費の支出も計画しています. 最後に,私自身の研究成果の発表等のために,プレゼンテーションに関わる機器・ソフトウェア等のための支出も行いたいと思います. 私は視覚障害者であり,板書によるプレゼンテーションは不可能です.そのため,スライドを用いた方法を取っています.私はIT技術をなかなかに使いこなせずにおりますが,近年のこの方面の進歩は目覚ましく,25年度は本研究の最終年度となりますが, このような支出をお許しいただきたいと存じます.
|