研究実績の概要 |
無限次元空間上の線型作用素に対して,正方行列の Jordan 標準形に相当する理論を構築すること。ここでは,可算無限次元 Hilbert 空間上の,有界な荷重合成作用素uCφ に限定して研究を行う。作用素ノルムを求め,その逆数を掛けてノルム 1 とした作用素の完全非ユニタリ部分を求め,それがクラス C0 に属するための u と φ の条件と,その時の Jordan モデルを u と φ の言葉で明示的に求める。 上述の「研究の目的」のための「研究実施計画」を実施する上で,2012年度までに, 順序を保存する作用素不等式の研究との関連が認識されるようになった。また,2014年度までに,結合法則が必ずしも成り立たない代数および双曲幾何の研究との関連が認識されるようになった。最終年度に実施した研究の成果の主なものは,任意の実内積空間の球がジャイロ可換なジャイロ群であるだけでなくジャイロベクトル空間の構造をもつことの,初等的な手計算による証明を与え,この方面の初等的手段による研究の可能性を示したことである。研究期間全体を通じて実施した研究の成果については,上記以外に,フルタ型の作用素不等式の拡張を与え,また行列不等式を応用することによって変数 x の p 乗 - 1 の幾つかの積の間に成立する関数不等式を発見し証明した。さらにその関数不等式が,Schur, Hardy-Littlewood-Polya, Karamata によるマジョリゼーションによる凸関数の特徴付け定理からも導かれることを示した。さらに,グランドフルタ不等式を成立させるパラメータの範囲についての解明を進展させた。 しかし,残念ながら,当初の「研究の目的」について顕著な結果が得られたとはいえない。
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