常微分方程式の漸近解析を通じて偏微分方程式の研究を行った.常微分方程式の理論を偏微分方程式の援用する際には比較定理やフーリエ級数,フーリエ変換等を用いた.具体的には以下の研究成果が上がった: 1.エネルギー関数を駆使した手法により線形常微分方程式の解が時刻無限大で有限値に収束するための十分条件を与えた.その結果とフーリエ解析を通じて,摩擦項等の付いた線形波動方程式の解が時刻無限大においてある関数に収束するための十分条件を与えた. 2.Emden-Fowler 型方程式の一般化である2階準線形常微分方程式のいわゆる中間オーダー正値解(弱増加解正値解)の漸近形を導出した.同様に,いわゆる緩減衰正値解の漸近形を導出した.この結果を援用してある種の退化楕円型偏微分方程式の正値解の漸近形を見出すことができた. 3.反応拡散型偏微分方程式系に関連した常微分方程式系として一般化されたLanchester型連立方程式の解の漸近挙動を考察した.古典的 Lanchesterモデルと同様に,初期値の関係に臨界的な場合が存在することが証明できた.この結果は反応拡散系の解の漸近論の確立に援用することができるであろう. 4.準線形常微分方程式を Karamata 関数のクラスで考察した.多くの方程式で,すべての Karamata 関数の形の解の漸近挙動を見出すことができた.初等関数には Karamata 関数に属するものが多いので,本質的な成果である.
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