巨大な群のユニタリ表現の標準的な因子分解(中心分解)および既約分解を具体的に記述するという群の表現の基本的な問題に取り組むことが、本研究の目的である。すなわち、分解の素子となるユニタリ表現あるいは指標の全体を適切なパラメータづけによって完全に分類し、表現の分解の法則を定める確率測度を具体的に求めることが、主たる課題である。われわれが扱う巨大な群においては、これらの分類パラメータの空間は一般に無限次元に広がる対象である。さらに、分解の法則の全貌をつかむには、分岐グラフ上の無限経路全体のなす大きな空間を考慮せねばならない。その解明のために、確率論の方法を駆使することが、本研究における一貫した観点である。 初年度は、無限対称群や無限鏡映群を含むクラスであるコンパクト群の無限環積を舞台とし、本研究の枠組をスタートさせた。群の指標や分岐グラフ上の調和関数およびマルチン境界について、詳しい性質を調べた。 次年度は、同じくコンパクト群の無限環積を主たる対象とし、帰納系の特性を利用して、分岐グラフの無限経路全体のなす空間上で、測度に基づく調和解析の展開を目指した。無限環積群の指標、分岐グラフの極小マルチン境界、経路空間上のエルゴード的測度を一体として捉えた包括的な理解がかなり進んだ。 最終年度は、無限環積群等の巨大な群上の調和解析に関してこれまでに行ってきた表現論的、確率論的、ポテンシャル論的アプローチの互いの連関を総括するとともに、一般の射影表現に主眼を置いた研究も遂行した。 本研究で得られた成果は、数編の学術論文および著書にまとめ、出版済みあるいは出版予定である。
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