研究概要 |
研究課題「局所平滑化評価式の非線型双曲型波動方程式への応用に関する研究」に沿って,空間変数に関して局所化されたエネルギーの時間変数に関する可積分性評価式を,準線形波動方程式の時間大域解の存在の証明に応用する研究を行ないました. このような「局所エネルギーの時間可積分性評価式」を証明する方法は複数知られていますが,SmithとSoggeによる方法は空間次元が2のときにも有効です.また,このような評価式は非線形波動方程式の解の長時間存在の証明にも有効であることがよく知られています. そこで,空間次元が2のときに小さくなめらかな初期値を与えるときの,異なる伝播速度を持ち非線形項がある退化条件(null condition)を満たす準線形波動方程式系の時間大域解の存在を証明したHoshigaとKuboの優れた美しい成果に,基本解の各点評価という面倒な作業を経ない別証明を与えることを試みました.Klainerman-Siderisの方法とSmith-Soggeの評価式を有効活用することにより,この試みは成功しました.論文は``The global existence theorem for quasi-linear wave equations with multiple speeds, II''の題目でまとめられてarXivで既に発表されています.数学雑誌での掲載に向けて改訂後に再投稿します.
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