研究課題/領域番号 |
23540199
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西谷 達雄 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127117)
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キーワード | ハミルトン写像 / スペクトル構造 / 実効的双曲型 / 零陪特性帯 / 初期値問題 / 適切性 |
研究概要 |
実効的双曲型作用素について,2次特性多様体が3次元の場合に,ハミルトン写像のスペクトル構造が余次元1の部分多様体で変化する場合を研究した.この余次元1の部分多様体に接しながら近づいてゆく零陪特性帯が存在しないと仮定する.このときこの部分多様体の外ではハミルトン写像の非零実固有値が存在し滑らかである.この非零実固有値と副主表象の虚部との比が有界であり,さらに狭義 Ivrii-Petkov-Hormander 条件が成立していれば初期値問題が適切であることを示した.この場合,この部分多様体に接しなければ,2次特性多様体自身には接する零陪特性帯が存在しても初期値問題は適切であり,これはハミルトン写像のスペクトル構造が一定である場合に知られている結果からは予想もできない結果である.この結果は2012年6月に Helsinki で開催された国際研究集会「Fourier Analysis and Pseudo-Differential Operators」で発表した.また2012年11月にはイタリアの Bologna を訪れ,Bologna 大学の E.Bernardi 氏と共同で2次特性多様体が一般次元の場合で,ハミルトン写像のスペクトル構造が余次元1の部分多様体で変化する場合の零陪特性帯の挙動をハミルトンの正準方程式を直接調べる,という立場から研究した.この共同研究の過程から,以前から知られていた,2次特性多様体に接する零陪特性帯の存在するための必要十分条件のより単純な別証明を発見した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実効的双曲型作用素で2次特性多様体が3次元かつハミルトン写像のスペクトル構造が余次元1の部分多様体上で変化する場合に限るが,ハミルトン流の軌道の挙動と初期値問題の適切性との関係を明らかにする,という本研究の目的を遂行することができた.
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今後の研究の推進方策 |
ハミルトン写像のスペクトル構造が余次元1の部分多様体上で変化する場合は,この部分多様体の外の2次特性多様体上で常に非実効的双曲型,常に実効的双曲型,片側で実効的双曲型でもう一方で非実効的双曲型,の3つの場合が起こりうる.最初の2つの場合は,初年度および次年度の研究で,2次特性多様体の余次元が3の場合に限れば,ハミルトン流の軌道の挙動と初期値問題の適切性との関係を明らかにすることができたが,残りの場合が未解決である.従ってこの未解決の場合を研究し,ハミルトン流の軌道の挙動と初期値問題の適切性との間の関係を明らかにする.さらに2次特性多様体の余次元が4以上の一般の場合を研究する.
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次年度の研究費の使用計画 |
国内の WKB 解析グループとの情報交換のための旅費および2013年6月にイタリアのピサで開催される国際研究集会「Linear and Nonlinear Hyperbolic Equations」および2013年8月にポーランドのクラコフで開催される国際研究集会「9th International Congress ISAAC 2013」に参加するための旅費を予定している.
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