非実効的双曲型作用素に対してそのハミルトン写像の二乗ベキの核と像の交わりが自明である場合には狭義Ivrii-Petkov-Hormander条件の下で初期値問題が適切であることが知られているがハミルトン写像の二乗ベキの核と像の交わりが自明でなく零陪特性帯で2次特性多様体に接するものが存在しない時には超局所エネルギー評価しか得られていなかった。この場合に波面集合が有限速度で伝播することを示しこれを用いて初期値問題が適切であることを初めて示した。さらに同じ方法を用いて正跡が零のときには初期値問題が適切であるための必要十分条件はLevi条件の成立することであることを示した。この結果はハミルトン写像の二乗ベキの核と像の交わりが自明である場合にHormanderが1978年に証明した結果の拡張である。この結果は2013年8月にポーランドのクラコフで開催された国際研究集会「9th ISSAC Congress 」および2013年7月にイタリアのピサで開催された国際研究集会「Linear and Nonlinear Hyperbolic Equations」で発表した。また非実効的双曲型作用素では基本分解可能であることと二次特性多様体に接する零陪特性帯が存在しないことは同値であるが2004年に与えた証明は非常に複雑であったがこの証明を大幅に簡略化することに成功した。日本数学会の2013年の年会で「二次特性点をもつ偏微分方程式の初期値問題」と題して企画特別講演を行った。
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