最終年度においては、正定値行列の幾何をめぐって特に2次行列のハイパーケーラー構造について研究したことを、愛媛大で開かれた日本数学会の秋季学会で発表した。 さらに、以前から作用素平均の「補間的な」pathについて着目していたが、そうなるための同値条件を論じたものを論文化して発表した。その接ベクトルとして得られる作用素エントロピー的な量について、補間的なpathから得られた場合にはKarcher方程式によって元のpathが再生できることがわかった。それを学習院大学で開かれた日本数学会春季学会にて発表した。この部分は論文としてはまだ発表されていないが、acceptは既にされている。また、一般的な幾何学的性質については、秋の京都大学数理解析研究所の研究集会で発表した。その他、作用素不等式関連では3編の論文を発表することができた。 全体として、正定値行列の幾何学の構造について、深く掘り下げた研究ができたのではないかと思われる。まだまだKarcher方程式から得られる多変数化された作用素平均については、未知なる部分が多いが、その土台となる2変数平均の性質については、基礎付けができたのではないかと思う。それを探るために、たくさんのさまざまな分野の文献を調べる必要があったが、その意味で、この科研費が果たしてくれた役割は大きかったと思う。
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