研究課題/領域番号 |
23540201
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
足立 匡義 神戸大学, 理学研究科, 教授 (30281158)
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研究分担者 |
前川 泰則 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70507954)
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キーワード | 多体問題 / スペクトル理論 / 散乱理論 / 波動作用素 / 漸近完全性 / 電磁場 |
研究概要 |
『空間的に一様な電磁場内での量子散乱の順問題及び逆問題』 研究代表者である足立は、その学生である石田敦英氏と藤原祐子氏と共同で、時間が経つにつれてゼロ電場へと漸近するような、空間的に一様な電場内での量子散乱逆問題に取り組み、以前足立と鎌田氏・数野氏・虎谷氏との共同研究(2011)で得られた結果の改良を行った。具体的には、散乱作用素からポテンシャルを再構成するための公式に現れる積分の評価の改良を行い、これまでよりも広いクラスに属するポテンシャルに対して、散乱作用素からポテンシャルが一意に定まることを示した。この手法は、時間周期的な変動をする一様電場で、その時間平均がゼロでないものに対しても有効で、Nicoleau氏の論文(2005)、藤原氏の修士論文(2010)に現れる結果をも改良するものである。また、当然のことながら定電場の場合にも応用できるので、Weder氏の論文(1996)、Nicoleau氏の論文(2003)、足立と前原氏の共同研究(2007)に現れる結果をも改良している。この結果を公表するべく、学術雑誌に論文を投稿して現在査読を受けている。また、足立はその学生である川本昌紀氏と共同で、時間周期的にオン・オフを繰り返すような一様磁場内での量子散乱順問題に取り組み、磁場のオン・オフの時間と、オンのときの磁場から定まる荷電粒子のサイクロトロン振動数との関係によっては、荷電粒子は加速されることを突き止めた。これを理論としてまとめるべく、現在更なる研究を続けている。また、研究分担者である前川は、自己相似解を持つKeller-Segel系の解の漸近挙動を研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、最終年度である平成25年度には取り扱いたいとしていた、時間には依存しているが、空間的には一様な電場と、定磁場の双方が関係するような量子力学系に対する散乱理論の研究は、実際には平成23年度にはその端緒が開けたことが一点である。また、平成24年度には、時間周期的に変動する、空間的に一様な磁場の中で最も単純なものに限ってはいるが、変動磁場の取り扱いについても端緒が開けたことがもう一点である。
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今後の研究の推進方策 |
『時間周期的な変動を持つ一様磁場内での量子散乱』 研究実績の概要のところでも述べたが、パルス状の一様磁場内での量子力学系に対する散乱問題に対して、一定の成果を挙げたいと考えている。より具体的には、波動作用素の存在と漸近完全性の問題の解決を目指す。現在までの我々の研究では、ポテンシャルによる摂動のない系に対する時間発展の性質のみ捉えられたに過ぎない。ポテンシャルによる摂動が加わった系でも、その性質が成立することは期待されるのであるが、それをHowland-Yajimaの方法などを用いて解析していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰り越しにより生じた次年度使用額については、平成25年度中にメキシコ国立自治大学のRicardo Weder教授を2週間程度招聘するために使用する予定である。平成24年度中に招聘する予定であったが、Weder教授の事情によりそれは実現できなかった。当該年度(平成25年度)に交付される研究費については、主に成果発表や研究打ち合わせのために旅費を用い、また、図書やパソコン等の購入のために物品費を用いる予定である。
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