研究課題/領域番号 |
23540207
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉野 正史 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00145658)
|
キーワード | ボレル総和法 / モノドロミー / 完全漸近解析 / 非可積分性 / ハミルトン系 / 特異摂動 / モーメント総和法 |
研究概要 |
(1) (論文出版および講演活動)解析的非可積分な共鳴ハミルトン系の指数型形式第一積分のボレル総和可能性を証明した.(出版済).解析的可積分でない共鳴ハミルトン系の角領域型の領域での完全積分可能性を証明した.(出版済).グルサー問題で小分母が現れるときの既存の結果を,完全漸近解析から再証明した.(出版済).なめらかな関数のクラスで完全積分可能であるが,解析的な関数のクラスで完全積分可能でないハミルトン系の存在証明.(出版済)ハミルトン系の接続問題について第一積分の観点から研究した.(論文投稿中). 2012年12月に日本数学会関数方程式分科会総合的研究で招待講演を行った.講演題目は「非可積分なハミルトン系の接続問題」.以上の成果は国内外の著名雑誌に発表した. (2) (セミナーおよび研究会の開催) 2012年10月に広島大学で研究集会を開催.2013年3月に「ボレル総和法と漸近解析」の題目で、若手研究者の研究発表と共同研究を中心とした研究集会を開催した.また,広島大学数理解析セミナーで,通年で定期的にセミナーを開催した.詳細は,吉野のホームページで公開中. (3) (若手および他分野の研究者との共同研究の実施)芝浦工大の山澤氏と多変数フックス型偏微分方程式の解のボレル総和可能性と特異性の研究を実施.国立環境研究所の田中喜成主任研究員と環境リスク評価モデルへの漸近解析理論の応用と進化型3種捕食系を研究し学会発表をした. (4) (外国との共同研究実施および次年度に向けての準備)ポーランドの研究グループとモノドロミーと漸近解析をテーマとして,研究討論を実施し,また2013年8月に共同主催者として,ポーランドのバナッハセンターで国際会議を開催する準備を進めた.この会議の後で,ワルシャワで日本人研究グループとポーランド研究グループで共同研究を実施する準備を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では,ハミルトン系の非可積分性を引き起こす構造の研究を中心にして,複素漸近解析や力学系の観点から非可積分なハミルトン系の研究を一層進めることを主な目的としていた.さらに,多自由度競争系での種の多様性と生態系機能の安定性への応用も計画していた.後者に関しては,まだ論文を発表するまでに研究が進展していないが,共同研究者の田中氏が生態学会で講演を行っており,着実な進展をしていると考えられる.前者に関しては,上記の研究実績の概要で述べたように,多くの興味ある結果が得られ,それらは論文発表,学会講演として発表された.外国との共同研究のうち,Gramchev教授(イタリア)との共同研究は,氏が体調を崩しており,現在研究は中断している.これについては、可能になり次第再開する予定である。Balser教授との研究は,情報交換をしながら継続しており,それは当該研究に生かされている.新しい取り組みとしてポーランドのボレル総和法とモノドロミーの研究者グループとの研究を前年度から開始した.他方,国内若手との共同研究,研究会の開催を通した研究の新展開,定期セミナーの開催等による研究の継続は前年度に引き続き,今年度も活発に実施された.また,若手の研究者の成果発表と共同研究のための研究集会も企画開催した.これらの理由により,本研究は今年度もおおむね順調に進展したと判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるので,今までの研究成果を整理して発展させる作業を行う。具体的には、非可積分なハミルトン系において、ボレル総和法を用いて非可積分性の意味づけあるいは非可積分性を起こす分岐多価性の研究に取り組む。さらに、非可積分性と第一積分の分岐多価性の関係の研究を通して明らかになってきた「非可積分性を特徴づけるモノドロミーの構造の研究」に取り組む予定である.このため,2013年の夏にポーランドのモノドロミーとボレル総和法の研究者とともに、研究集会と共同研究をポーランドのBanach centerで予定しており,このような協力を通して、一層研究を推進する計画をしている.研究費は共同研究のための打ち合わせ旅費,国内・国外の研究集会に参加して,共同研究および成果発表を行うための旅費,および広島大学に研究者を招へいして研究打ち合わせを行うための旅費として用いる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|