研究課題/領域番号 |
23540211
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
柳 重則 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (10253296)
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研究分担者 |
中村 徹 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (90432898)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Navier-Stokes 方程式 / 圧縮性流体 / 時間大域的挙動 |
研究概要 |
燃焼モデル方程式に対する初期-境界値問題を考察し、解の時間大意的挙動について研究を行った。特に、反応次数の総和を表すパラメータに着目し、このパラメータ m が1より大きい場合に、解は定常解へ、どの程度の速さで漸近していくか解析を行った。解と定常解を直接評価する従来の手法では、t の -1/2(m-1) 乗の速さで減衰することしか得られないため、時間のみに依存し、空間に関しては一様な解を考察することとした。このような解は唯一つ存在し、定常解へ少なくとも t の -1/(m-1) 乗の速さで漸近することが容易に示された。さらに、方程式の解と、時間のみに依存する解との差を評価し、残燃料の濃度および絶対温度を表す関数の和は、t の -1/(m-1) 乗の速さで減衰するとの結論を得た。残燃料の濃度と、絶対温度を表す関数はそれぞれ同様の評価を持つと予測されるため、今回得られた結果は最適とは言えないが、初期値に制限が無く、大きなデータを扱える点において意義があると言える。 また、一般的な対称双曲・放物型連立系に対する境界層解の存在性に関する研究を行った。まず、定常問題に現れるヤコビ行列の固有値が全て負となる場合において、定常解の大きさが十分小さいという仮定の下で定常解の存在を証明した。この方程式系の定常問題は1階の常微分方程式系に帰着されるため、全ての固有値が負となれば無限遠方の定数状態は漸近安定平衡点となるため、初等的な力学系の理論により容易に証明することが出来る。一方、固有値の一つが0に縮退してしまう場合においては、ヤコビ行列の評価だけでは解の存在を示すことは出来ないが、非線形項を詳細に評価し中心多様体定理を適用することにより、縮退定常解の存在を示すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的は、圧縮性 Navier-Stokes 方程式の時間大意解を考察し、特に大きなデータに対して、時間大域的挙動を明らかにすることである。今年度は燃焼モデル方程式を中心に研究を行ったが、解の定常解への漸近レートについては、従来の結果と比較して改善が見られた。未知関数ごとに漸近レートが改善されたわけではないため、今回の結果は最善とは言えないが、初期値の大きさには制限がなく、この点において研究の目的の達成度は、"概ね順調に進展している" と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度と同様に、文献調査および机上における計算を中心に研究を進める。燃焼モデル方程式については、未知関数ごとに定常解への漸近レートが改善出来ないか、引き続き解析を行っていく。並行して、Inflow - Outflow 問題や、非有界領域における、圧縮性 Navier-Stokes 方程式について研究を行っていく。Inflow 問題に対するアプローチとしては、1 次元モデルにおいて、無限遠方での状態が亜音速のみならず、超音速になっても、量子効果により定常解が存在して、この定常解は漸近安定であることを示した松村氏らの手法を参考にして研究を進めていきたい。 また、本研究に関連する主要なセミナー・研究集会に参加し、研究報告、情報の収集に努めていくとともに、適宜、談話会を開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費のうち、約3万円が次年度に繰り越しとなっているが、これは発注済みの図書(洋書)の一部が未完・在庫切れのため、年度内に納入されなかったためである。 次年度において、研究分担者と研究打ち合わせや、国内外における各種セミナーや研究集会に参加し、研究報告、情報の収集を行うため、旅費として53万円の使用を計画している。また、物品費として、主に偏微分方程式関連の図書の購入と、PC関連の消耗品の購入のため24万円を使用する予定である。さらに談話会等の講演者への謝金として3万円の使用を計画している。
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