研究課題/領域番号 |
23540213
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
諸澤 俊介 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (50220108)
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キーワード | 複素力学系 / 超越整関数 / 特異値 / 遊走領域 / ベーカー領域 |
研究概要 |
超越整関数族 f_{a}(z)=z+exp(z)+a を考察した。この関数はパラメータによりベーカー領域や遊走領域を持つ場合がある。それらの領域上の反復合成の極限関数は無限大となる。また、これらの関数は無限個の特異値を持つ。従って、この関数族のパラメータ空間の分岐図を定義するには2次多項式族の場合のマンデルブロート集合や指数関数族の場合のように定義できない。そこで、対数持ち上げにより分岐図を定義した。その中の遊走領域を持つパラメータからなる成分とベーカー領域を持つパラメータからなる成分について考察をした。その方法として f_{a}(z) に広義一様収束する特別な多項式族 P_{d,a}(z) を考えた。しかし、サリヴァンの定理が示すように多項式は決して遊走領域を持つことは無い。また、ベーカー領域も、その定義から多項式の力学系では現れない。しかし双曲性を持つ遊走領域やベーカー領域を持つ f_{a}(z) について、それに広義一様収束する多項式族 P_{d,a}(z) は力学的にも収束することを示した。すなわち、多項式のファトウ成分の超越整関数のファトウ集合へのカラテオドリー収束、それと同値であるジュリア集合のハウスドルフ収束を示した。このことによりこの超越整関数のベーカー領域が吸引領域の極限であること、遊走領域が増大する吸引周期の極限であることが判る。また、分岐図についてもいくつかの成分についてその収束を考察した。指数関数族については多項式の力学的収束についての研究はある。しかし、遊走領域やベーカー領域を持つ超越整関数への力学的収束は個別の具体的関数についてはあるが、パラメータ空間については初めてである。これについては現在論文の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超越整関数特有のファトウ成分である遊走領域とベーカー領域について、それらを持つ関数族について考察をした。それらは当然無限個の特異値を持つ。その超越整関数に広義一様収束するある多項式族を考え、力学的収束を示すことにより多項式の力学系で現れる周期成分を用いて超越整関数特有のファトウ成分である遊走領域やベーカー領域を理解することができた。またこれらの成分を持つ関数族のパラメータ空間についての研究は今までに無いものである。
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今後の研究の推進方策 |
多項式列の広義一様収束極限として、遊走領域やベーカー領域を持つ超越整関数を考察する。また、多項式列をうまく構成することにより遊走領域を持つ超越整関数を構成する。 海外での研究集会に参加し、Bergweiler、Rippon、Stallard らと情報交換および議論をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年5月の Scotland の Edinburg で行われる研究集会「The role of complex analysis in complex dynamics」に参加し、情報交換および情報収集を行う。残りの科研費は国内研究集会の出張旅費及び複素力学系関連の図書の購入に充てる。
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