研究課題/領域番号 |
23540216
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
加藤 幹雄 信州大学, 工学部, 教授 (50090551)
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研究分担者 |
斎藤 吉助 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30018949)
田村 高幸 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (30302582)
鈴木 智成 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00303173)
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キーワード | 国際情報交換 / Banach space geometry / ψ-direct sum / convex function / uniform non-squareness / geometric constant / von Neumann-Jordan定数 / James定数 |
研究概要 |
(1) 任意有限個のバナッハ空間のψ直和に対するUNSQ性の研究は著しく煩雑であり,筆者等による2個の場合の結果以来,一つの公開問題になっている。この問題の解決を展望して、そのweak nearly uniform smoothnessを特徴づけた。その際,部分的に[ell]_1ノルムに一致するノルムを生成する凸関数の族を導入した。応用として、凸関数を用いてUNSQでないが不動点性を持つ空間を豊富に構成した(Comment. Math., 2012)。また、この凸関数の族について研究を進め、一連の成果を得た。とくに、ψ-ノルムが狭義単調な場合にUNSQ性を特徴付けた(preprint)。またuniform non-[ell]n_1性について同様の結果を得た(preprint)。 (2) 単位区間上の凸関数からC2上のabsolute normを構成したBonsall-Duncanの結果を拡張して、任意の有限区間上の凸関数からabsolute normを構成する手法を与えた。これにより一連の2次曲線からC2上のabsolute normを構成し、それらのvon Neumann-Jordan(NJ)定数を決定した(J. Nonlinear Convex Anal., 2012)。この結果からNJ定数とJames定数に関する最近の不等式(高橋-加藤,JMAA, 2009)の精密化について知見を得た。 (3) C2上のabsolute normnのNJ定数を導出する従来の結果を包含する定理を得た(preprint)。 (4) Smoothnessに関わる定数A(X)を導入し,一連の結果を得た(投稿中)。 (5) これらの成果を国際会議ISBFS2012(招待講演)、数学会秋季総合分科会、関数空間セミナー等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
任意有限個のバナッハ空間のψ直和について数年前よりUNSQ性の研究を進めてきたが、その前段階であるWNUS性の研究成果が今年度ようやく満足のいく形で出版された。その研究過程で見出した[ell]_1型ノルムを生成する凸関数の族について研究を進め、当初の予想をはるかに超える成果を得ている。それらは懸案のUNSQ性の研究に大きな手がかりを与えること、またバナッハ空間論において効果的に応用されることが期待される。幾何学的定数については、とくにNJ定数や新たに導入した定数A(X)などについて一連の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、任意有限個のバナッハ空間のψ直和の研究を進める。とくにUNSQ性を特徴付けることを目指す。また、[ell]_1型ノルムを生成する凸関数の研究を進めると同時に、[ell]_p型など[ell]_1型ノルム以外のノルムを生成する凸関数を考察する。多方面で応用される凸関数の基礎的研究としてその意義は大きいと思われる。また、空間X_(ψ)の研究を行う。同時に、これまでに得られている幾何学的定数に関する研究成果(未発表)を纏めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 研究期間の最終年度として、研究の進展及び成果取りまとめのための研究打ち合わせ旅費、また国内外での研究成果発表のための旅費に多くを充てる。とくに、これにより研究分担者、研究協力者等と緊密な打ち合わせを行い、現在preprintの段階にある論文数編を完成させるなど着実な研究の進展を図る。また、本研究の成果を数学会、国際会議等で発表する。なお、前年度、海外出張を控えたために生じた繰り越し額を併せてこれに充てる。 (2) 文献をはじめ、部分的な成果などを逐一印刷して確認するため、研究費の一部はインクトナー等のプリンター関係消耗品などに充てる計画である。
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