研究概要 |
本研究の目的は, 交付申請書に記載した通り, 非線形 Sturm-Liouville 微分作用素を主要部とする様々な微分方程式や方程式系に対して, (a) 非線形微分方程式の振動性の特徴付け, (b)非振動型の微分方程式に非摂動項を付加したときの影響, (c) 非振動性の解析における Karamata 関数(代表的な関数: 緩変動関数, 正則変動関数, 急変動関数) の活用, (d) 関数方程式と Karamata 関数との関係, という4つの課題に焦点を当てた研究を行った.[研究実施の具体的な内容][1] 情報収集: 考究の対象となっている微分方程式に対して知られている先行研究の結果を体系的に纏め, 証明に利用されている数学的手法及び技術を分類し可能な限り情報を得る作業を行った. 情報の収集にはインターネット(Math.Sci.Net., Zentralblatt MATH等)と他大学の図書館を利用した.[2] 研究成果報告と論文策定: 研究経過をほぼ定期的に振動理論の世界的権威で今なお世界の情報を握っている草野尚教授(広島大学名誉教授, 福岡大学)に報告して批判と助言を求めた. また, 今後の研究に関する打ち合わせ及び論文策定も行った. [3] 研究成果発表: (1) 平成23年9月の日本数学会秋季総合分科会(信州大学), (2) 同年10月の富山大学解析セミナー(富山大学), (3) 同年9月の京都大学数理解析研究所(京都大学)において得られた研究成果を発表し好評を博した.[4] 海外研究者招聘: 平成24年1月にコメニウス大学(スロバキア)の Jaroslav Jaros教授を招聘し, 研究課題に対する情報や意見交換を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[主な研究成果][1] Takasi Kusano, Jelena Manojlovic and Tomoyuki Tanigawa, Sharp oscillation criteria for a class of fourth order nonlinear differential equations. Rocky Mountain Journal of Mathematics, 41 (2011), 249--274. ある4階準線形微分方程式の非振動解の無限遠点における漸近挙動に従って分類し, 分類された解の存在と漸近挙動を詳細に分析した.[2] Takasi Kusano, Vojislav Maric and Tomoyuki Tanigawa, An asymptotic analysis of positive solutions of generalized Thomas-Fermi differential equations -- The sub-half-linear case, Nonlinear Analysis: Theory, Methods & Applications, 75 (2012), 2474--2485. 一般化された Thomas-Fermi 型微分方程式の優半分線形版の正値解をKaramata 関数の枠組みで考え, 緩変動解と指数1の正則変動解以外の正則変動関数解の存在とその漸近挙動に関する詳細な情報を求めた. 上記通りの研究成果を得た. 論文発表になっていないが, ある3階非線形微分方程式の非振動解を Karamata 関数理論の枠組みの中で考察し解の存在と詳細な漸近挙動を求めて現在2編の論文をある審査付きの雑誌に投稿している. 以上のことから研究は概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の後半に, ある3階非線形微分方程式の非振動解の存在性とその漸近挙動について研究し2編の論文を執筆したが, 今後は未だ考究の対象となっていない3階方程式を考察し, さらに申請書に記載した通りの4階から一般の高階へと方程式の枠を広げ得られた研究成果を形ばかりではなく実質的にも"理論"と呼ばれるとうに体系化したいと考えている.
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