研究課題/領域番号 |
23540220
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西尾 昌治 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90228156)
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研究分担者 |
佐官 謙一 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70110856)
竹内 敦司 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30336755)
下村 勝孝 茨城大学, 理学部, 教授 (00201559)
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キーワード | ポテンシャル論 / 熱方程式 / 分数冪ラプラシアン / ベルグマン空間 / テープリッツ作用素 / ハーディ空間 |
研究概要 |
当該年度は、本研究課題の3年目にあたり、初年度および昨年度に得られた成果をもとに方向性を定め,さらなる研究の発展に努めた。また、当初の研究計画で挙げられている項目には進展の得られなかったものもあるが、その重要性に鑑み、引き続き情報の収集に努めた。 本研究でとりあつかう放物型方程式は、おおまかに次の3種類である。1つは多様体上の熱方程式、もう1つは高階の熱方程式である多重熱方程式、そして3つ目はラプラシアンの分数冪を含む放物型方程式である。 第1の熱方程式のついては、昨年度から引き続き分担者の下村勝孝を中心として,解を保つ変換を指針として研究を進めた。その結果,そのような変換と深い関連が見込まれる不定値リーマン多様体上へのベートマン変換の一般化への足がかりとなる成果が得られた。論文として発表済み。第2の多重熱方程式については、現在情報を収集中である。いくつかのアイデアが得られ,検討を加えているところである。第3の分数冪放物型方程式については、これまでよい成果が得られつつある方向である関数解析的手法によって研究をすすめた。そして本年度から本格的に開始したハーディ型空間の研究では、ベルグマン型空間との関連に関する結果が得られ、札幌で開催されたポテンシャル論研究集会で口頭発表を行った。まだ始まったばかりで不十分な点があり,今後さらに検討を加える必要性を感じている。また、ベルグマン空間上のテープリッツ作用素について、これまでに得られた研究成果をまとめて、ルーマニアのブカレスト大学で開催された研究集会で発表し一定の評価を得た。そのなかで、今回新たに進展した部分は、論文としてまとめて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において、本研究で扱うべき放物型方程式として,熱方程式,その多重化方程式、そして飛躍型マルコフ過程と関連した分数冪放物型方程式の3つに着目した。 個々の研究対象に対する成果については、9項の研究実績の概要に記したが少し補足する。熱方程式に関して当面の目標はカロリックモルヒィズムを許容する多様体の分類である。正定値計量のみならず,不定値計量を視野に入れることにより研究が進展している点が興味深いと考えられる。そして、多重熱方程式については,未だ情報収集の段階にあるが、いくつかのシードとなる情報が集まりつつある。論文になっていないため,停滞しているような印象は否めないが,やがて目に見える形での進展が期待される。最後に分数冪方程式に関しては,関数解析的方法が非常に功を奏し、想定していた以上に研究が進展している。また、論文として発表しうる成果もいくつか得られている。 以上のように、研究はおおむね当初の計画通りに順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本研究課題における最終年度になり、研究をどのようにまとめて行くか、そして、成果をどう発表して行くかが重要になると考えられる。それに加えて,次の研究にいかにつなげて行くかと言う点も忘れてはならない。しかし具体的な方策は基本的にこれまでと変わろところはない。セミナーの企画,研究集会の利用、および、関連の研究者との情報交換である。 そして、当初の研究テーマに対する今後の方向性を記せば,次のようになる。 1。「熱方程式とマルチン境界の幾何学的考察」:このテーマでは,自然に現れてきた問題点である「熱方程式を保つ変換」を当面の課題としてとらえている。これまでの考察から、半リーマン多様体を視野に入れながら進めるのが実り多い方向性であると考えられる。 2。「多重熱方程式に関する平均値の性質に関する研究」:時間的に本研究課題中に具体的な成果が出るか微妙なところであるが、地道な情報収集活動を積み上げていくことになる。 3。「放物型ベルグマン空間上の作用素解析」:方向性は大きく2つあると考えたいる。1つはこれまでに成果の大きい放物型ベルグマン空間上のテープリッツ作用素のさらなる詳細な解析である。もう1つは、考えている空間の枠を広げる研究である。ハーディ空間、ブロッホ空間、ソボレフ空間などが考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
情報収集のために図書の導入を予定していたが、年度内に納入されないものもあり、その分の物品費が次年度使用額として計上されている。 上記の次年度使用額については図書が納入され次第、物品費として使用する計画である。 また、その他の部分については計画に変更はなく、予定にしたがって、各種セミナーへの参加、研究協力者との研究打ち合わせ,セミナー企画のための費用として有効に活用する計画である。
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