研究課題
タイヒミュラー空間のサーストン・コンパクト化は、その境界点が射影的測度付測地線層として幾何的に理解できることから、境界の局所線形構造や位相的構造についての深い研究が行われてきた。また写像類群が境界まで作用することから、写像類群を調べるための土壌の役割も果たしている。しかしタイヒミュラー空間のサーストン・ コンパクト化の構成には無限次元実射影空間への埋め込みを経由する必要があり、そのために解析が容易ではなかった。本研究の目標はタイヒミュラー空間の次元プラス1 個の単純閉測地線の自由ホモトピー類をうまく選ぶことで、サーストン・コンパクト化を有限次元実射影空間内の多面体として実現し、多面体への写像類群の作用を局所線形写像として具体的に記述することである。2013年度において申請者とGendulphe(ローマ大学)はサーストン・コンパクト化の多面体としての実現について、2次元と3次元の場合に解決した。その後より一般の場合については、球面から2点以下の点と1つ以上の円板を除いた双曲型リーマン面以外のすべての有限型リーマン面のタイヒミュラー空間について、 タイヒミュラー空間の次元プラス1個の単純閉測地線の自由ホモトピー類をうまく選んで、タイヒミュラー空間自身を有限次元実射影空間内の多面体の内部領域として実現できることを構成的に示した。2014年度以降はタイヒミュラー空間の境界、つまりリーマン面の退化の研究について方針を変更し、複素解析幾何の手法を用いてトーラスの2重分岐被覆で得られる種数2のリーマン面の退化族を具体的に構成してその正則切断をすべて決定する研究を行った。2015年度は前年度の結果を一般化し、トーラスのn重分岐被覆で得られる種数nのリーマン面の退化族を具体的に構成してその正則切断をすべて決定する研究を行った。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
The Annales de la Faculté des Sciences de Toulouse
巻: Ser.6, Vol.23 ページ: 95-114