楕円型偏微分作用素の理論に関して初年度から継続した研究を行い、次の結果を得た。 1. 発散形および非発散形の楕円型作用素に関して、前年度まではソボレフ空間の枠内で正則性定理を考察していたが、ベーソフ空間の枠内でも同様の定理が成り立つかどうかを調べた。正則性定理は領域の境界が十分滑らかなときは、成立することが知られているが、境界の滑らかさを従来の条件よりも弱くできるかが、この研究の意図するところである。ソボレフ空間の枠組みでの定理の証明では、証明は4つのステップから成っていたが、ベーソフ空間に関しては対応する最初の2つのステップに関して、検証が完了した。 2. 分数階のソボレフ空間の理論は、既により一般化したトリーベル・リゾルキン空間という形で深い研究がなされているが、専門外の研究者や入門者にとっては、かなり敷居が高い。そこで、村松の積分表示式を軸にして、非専門家でも手軽に扱える形で再構築しようと試みた。村松オリジナルの方法では、積分表示式を2回用いて得られる第2積分公式が中心的役割を演ずるが、この公式自体が4つの項から成り、取り扱いが大変である。本研究では村松の積分公式にカルデロンの再生公式を組み込むことにより、2つの項のみから成る積分公式を作り、この公式を用いていくつかの定理を簡明に証明することに成功した。 同様のことをベーソフ空間についても考察し、得られた手法を楕円型作用素の正則性定理の証明の一部に応用することができた。
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