研究課題/領域番号 |
23540229
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岸本 晶孝 北海道大学, 名誉教授 (00128597)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Cスター環 / 準対角性 / 内部近似性 |
研究概要 |
Cスター環上の流れについてのQD(準対角性)の概念を精査した。この流れは何らかの意味で行列環上の流れで近似できるものだが、環が完全であるときにこの性質を精密にすることができ、結果的に同値な条件を与えた。つまり、接合積上の忠実な表現を与えるような共変表現に対し、実際に表現空間上そのような流れで近似できることを示す。もちろんCスター環の内部からそのような近似が可能ならばその流れはAF流れという特殊なものになってしまうわけだが、この近似では、環をB(H)に埋め込んだときにその中で文字通り近似をしたというわけである。(もうすこし正確にいえばB(H)の有限次元環上の流れを実行するハミルトニアンは元の流れのハミルトニアンの小さな摂動になっているという条件も付け加わる。) UHF流れについても精査した。(UHF流れとは行列環上の流れの無限テンソル積として定義されるような流れである。)行列環上の流れに対してはそのハミルトニアンが定数を除いて一意的に定まる。よってUHF流れはそれをいくらでも大きな部分行列環に制限することでスペクトルの列が(定数の列を除いて)一意的に定まり、同時にこれがUHF流れを定める。一般の流れについては得られないような情報であり、これを精査して何らかの知見を得ておくことは今後の流れの研究に必要なことと思われる。この場合には「大抵の」場合にスペクトルは、分散が発散するとともに正規分布に近づくと思われるが、このことを確かめた。議論は組み合わせ論的で、この方法論が一般の流れに適用できるとは思われないが、Rohlin流れのようなコサイクル性質が成り立たないことを示すなど、QDなどの有限次元近似可能な流れでの様子が多少なりとも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目的として掲げたいくつかの類似の条件の間の関係については未だわかっていない。これについては招聘したひとの一人とは議論をしたが、結果としてまとおめうるほどの進展はなかった。そのかわりに、実績の概要でのべたように、新たな条件を見出した。(これは招聘した別の人より刺激をえた結果である。)またAF流れよりももっと特殊なUHF流れについても調べてみた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的に向かって研究を続行する。つまり、QD(準対角性)、MF(有限次元近似性)、AI(内部近似性)などの間の関係を探求する。とくに、QDの特別な場合であるRF(剰余有限次元性)の場合にAIが従うか動かを調べる。それが困難な場合はさらにはその中でも特殊なモデルについて探求したい。(今考えている問題は、量子格子系に出てくるモデルで化学ポテンシャル論と関連した一般論とも関係している。) 境氏が昔提唱した微分の問題を再訪したい。その中で氏の導入したAF環上のnormal derivationの考え方を一般のCスター環でも導入出来ないかを考えたい。つまり、流れの生成作用素(derivation)の定義域(Banachスター環)に対する条件でAIを導き出すもの(できれば同値なもの)を考えたい。この条件は、普通に定義されるAI流れが当然満たすように定義されるべきである。 さらに次の目標を追加したい。準無限Cスター環であるCuntz環上の準自由流れはRohlin条件をみたせば互いにコサイクル同値になるが、同様の結果を、接合積が単純になり、同じ温度でKMS状態をもつ場合にも示したい。これは、最近の単純Cスター環の分類理論には含まれないが当然予想されるべき結果である。ただし証明できるとすれば、「準自由」という条件を十分に使うことになるはずで、Rohlinの場合の同様の事実の証明より困難であると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度中に、米国ネバダ大学クムジアン氏を招待したが、来訪予定の決定が遅れて氏への滞在費の支給ができなかったため(氏は3月19日来日)。未使用額は次年度の研究者の招聘に充てる。
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