研究課題/領域番号 |
23540229
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岸本 晶孝 北海道大学, -, 名誉教授 (00128597)
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キーワード | Cスター環 / 流れ / 準対角性 / MF性 / 解析的部分環 |
研究概要 |
Cスター環上の流れについての、MF性、準対角性、内部近似可能性の観点からの研究:可分Cスター環上の流れに対するMF性を内部近似可能性との対比より調べた。MF性とは、その流れが行列環上の流れである弱い意味で近似できるもののことだが、その弱さゆえに遥かにその成立を確かめることが容易で、そのことを二三の結果としてまとめることができた。たとえば、統計力学モデルで構成される時間発展は内部近似可能、ゆえにMF性をもつが、その空間移動に関する接合積として作られるCスター環上に自然に拡張された流れもまたMF性を持つことが確かめられた。(このモデルのCスター環は核型なので、準対角性ももつ。)内部近似可能性については、成り立たないと予想して解こうと努力したが、部分的結果のみで最終的結果はまだ得られていない。(内部近似可能性は40年ほど前より流れの重要な性質として意識されているが、個別のCスター環の性質に強く依存するせいか、いまだ目立った結果は得られていない。) Cスター環上の流れに対する「解析部分環」の研究。これは「目的」には記していないが、流れの研究に対するひとつの手段であるスペクトル理論を用いて、解析部分環が極大である必要かつ十分条件を明らかにした。(解析部分環とは、たとえば複素平面の単位円周上の連続関数環と、その単位円の内部に解析接続できるものからなる部分環という関係を、流れをもつCスター環に一般化したものである。)これは、ほぼ、前段で取り上げた性質とは相いれない強コンヌスペクトルが全体になるという条件である。(これは同様のWスター環に対する結果をCスター環の場合に移植し、Cスター環での周期的流れに対する結果を一般化するものである。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来目的とした、Cスター環の流れに対する、内部近似可能性、準対角性、MF性に関しての関係を明らかにする視点からはあまり進展はなかった。しかし、理論的研究は予定通り進まないのが(私の場合)普通であるし、その過程で気づいた点に回り道するのが常である。MF性は、一番最近に注目した流れの性質であるが、これが(物理モデルに現れる流れに対する)普遍的に成り立ちうる性質であることが一層明らかになったことは、前年度の大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度前半、もう一度、流れに対する内部近似可能性とMF性の関係の解明に努めたい。この解明が進まないのは、別の観点から、結局は流れの無限小生成作用素である微分作用素の理解が不十分なためかと思うようになった。これは、1970年代に議論されていた問題(1980年頃に結果が本にまとめられ以来目立った成果のない問題)への先祖がえりになってしまうが、その当時に分かっていなかったCスター環や自己同型に関する結果も多少はあるので、再度試みるのも有意義かと思う。このためには、流れだけでなく、「半流れ」も考える必要があるという結論に達した。(非常に特別な場合、I型因子環上の準同型の1係数半群に関しては、Arveson、Powersなどによる近年目覚ましい結果があるが、これらの結果はCスター環でめざすべき事柄には直接関係しないようである。でも何らかの示唆は与えると思う。)今年度を通してこの後者の観点から、幅広く研究したい。特にCスター環(とくにUHF環)上の半流れで、CAR形式では得られないものの例を得たい。
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次年度の研究費の使用計画 |
9月半ばイギリスで開かれる作用素環と力学系に関する研究集会に参加し、その機会になじみの研究仲間を訪れてこの研究について議論するために使用する。そのほか国内の集会にも一二度参加して、この研究にも参考になりそうな新しい分野にも挑戦したい。
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