研究概要 |
本科研費の研究成果は以下の項目に分けられる。1.作用素あるいはトレース関数の凸性の数学理論:科研費申請で説明したように、他の多くの研究者と共同で開発した種々の作用素不等式の理論と、Effros が作用素の関数に拡張したパースペクティブ関数の理論を強力な道具として研究を行った。Edward Effros とこの方向をさらに発展させる共同研究を行い、最近の成果を論文に作成中である。2.量子情報関数の研究:項目1で発展させた一般理論を応用して、Temme, Kastoryanao, Ruskai, Wolf, Verstrate (J. Math. Phys. 51:122201) によって導入された量子chi-squareダイバージェンスの凸性を証明した。量子chi-squareダイバージェンスは量子統計に依存して多様であり、この結果はこれまで特別な場合でしか示されていなかった。2012年8月に開催される国際数理物理会議でこの成果について招待講演を行う。3.量子情報理論の統計力学への応用研究のための特定の物理モデルの解析:この研究はまだ具体的な成果が得られていない。4.単調および凸作用素写像の理論:オクスフォード大学から学術参考書を出版する予定で10年来継続中の研究である。この研究過程で発見したLoewnerの定理の新しくて簡易化された証明をプレプリントに著し、いくつかのコンファレンスとセミナーで講演した。
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