研究課題/領域番号 |
23540232
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
石渡 通徳 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (30350458)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
凝集解をもつ臨界放物型方程式については、空間全領域かつ解が必ずしも正値でも球対称でもない場合の漸近挙動を解析し、エネルギー量子化現象が起こることを明らかにした。また時間微分項の前に特異な重み関数をもつ臨界放物型方程式の時間大域解の挙動について、Sobolev norm の時間大域的有界性を示すための理論的枠具無の探求を行った。これにより、時間微分項も劣微分により支配される放物型方程式の時間局所解の理論が必要であることが分かった。空間非有界な場合の逃げ去り解の解析については、基礎となる Lojasewitz-Simon 不等式に関する文献検索を行い、適用可能性を探った。 派生する問題として、球上の対数関数重みをもつ臨界型Hardy不等式及び、全領域上でのスケール変換不変な臨界型Hardy不等式に付随する最小化元の非存在を考察した。両者とも空間二次元の場合には最小化元の非存在が得られた。さらに Lorentz 空間の Sobolev 空間への埋め込みに付随する最良定数の達成可能性を考察した。結果として、有限指数の場合は、Hardy-Sobolev 最良定数の達成可能性と同値であることが示されたが、指数が無限大の場合には状況がいまだに明らかではない。Trudinger-Moser 型不等式に付随する最良定数の達成可能性については、達成される場合とされない場合があることがすでに示されているが、この境目が、正規化ノルムによる単位球の「滑らかさ」と密接に関連することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は「臨界指数をもつ放物型方程式の凝集解の漸近挙動」及び、「非有界領域における放物型方程式の逃げ去り解の漸近挙動」を、付随するエネルギー汎関数の Palais-Smale 条件の破れ(一種の非コンパクト性)の観点から解析するものであり、同様の研究はほとんど存在しない。このことにより、本研究課題では、解析しやすい具体的な問題について解の挙動の詳細を明らかにすることと、一般的な問題に対する解析い手法開発の突破口となりえる問題の構造を明らかにすることの二点が重要である。前者については、前年度まで会に課していた「球対称かつ正値」という条件を全て外し、漸近挙動の一部を明らかにすることができた。特に時間大域解でゼロに収束しないものについて、その軌道に沿ったエネルギーが量子化現象を起こすことが明らかになったが、これは既存の手法では取り扱えないものである。後者については、「逃げ去り解」の概念自体がまだ解析学に根付いていないため、解析手法自体から開発しなければならない。今年度は Lojasewitz-Simon 理論の適用可能性を探ったが、もともと同理論は汎関数の臨界点周りでのスペクトル展開の状況がよくわかっている場合に、解軌道のコンパクト性を a psteriori に導出するもので、本研究課題に対して適用可能性があるかは未知であった。平成24年度の研究により、同理論が基本的に適用可能性をもつことが分かったが、そのままでは適用できず、適切な逓減法との併用が不可欠であるとの結論に至った。 以上二点の意味で、当初の計画とは若干異なってきてはいるものの、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は「臨界指数をもつ放物型方程式の凝集解の漸近挙動」及び、「非有界領域における放物型方程式の逃げ去り解の漸近挙動」を、付随するエネルギー汎関数の Palais-Smale 条件の破れ(一種の非コンパクト性)の観点から解析するものである。 前者に関しては、いわゆる藤田型と呼ばれる方程式については、これ以上の解析はなかなか困難である段階に達しつつあり、新手法の開発が必要である。平成24年度に代表者によって発見された、時間微分項の前に特異な重み関数を持つ方程式に関する解析が、この新手法の開発のモデルケースとなりえることが期待されるので、この型の方程式について時間局所解の存在から理論を構築することを考える。 後者については、引き続き Lojasewitz-Simon 理論と適切な逓減法との併用可能性を検討していく。 派生する問題として、球上の対数関数重みをもつ臨界型Hardy不等式及び、全領域上でのスケール変換不変な臨界型Hardy不等式に付随する最小化元の非存在を高次元の場合に考察する。Lorentz 空間の Sobolev 空間への埋め込みに付随する最良定数の達成可能性を、第二指数が無限大の場合に考察する。Trudinger-Moser 型不等式に付随する最良定数の達成可能性については、達成される場合とされない場合があることがすでに示されているが、この境目が、正規化ノルムによる単位球の「滑らかさ」と密接に関連することがわかったので、これを実現する他の例を探求する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度と同様に、大半を研究連絡のための旅費に使用する予定である。
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