研究課題/領域番号 |
23540233
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小沢 登高 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (60323466)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 作用素環論 / 離散群論 / 関数解析 |
研究概要 |
2011年度はBanach環,距離幾何学,(純代数的)環論等の雑多な研究を行った.1.「任意の可縮なBanach環は有限次元半単純なものに限るか?」という有名未解決問題に取り組み,適当な仮定のもとでそれが成り立つことを示した.即ち,一様近似性を持つBanach空間の上に忠実な作用を持つような可縮なBanach環は有限次元半単純に限る.一般の場合にはワイルドな反例が存在すると考えられている.2.(粗い)距離空間の漸近次元に関して,有限次元ならばその距離空間は従順というHigson--Roeによる良く知られた定理がある.本年度の研究では,Dranishnikov & Sapirの問題に答えて,より一般に漸近次元増大度が劣指数関数的でも同じ結論が成り立つことを示した.この結果は,「Thompson群が従順か否か?」という有名未解決問題とゆるく関係している.3.(単位元を持つとは限らない)環 R は R=R^2 を満たすときベキ等であると言われる.単位元を持つ環はもちろんベキ等である.私はN. Monod(EPFL)及びA. Thom(Leipzig)との共同研究で,「有限生成ベキ等環 R は常にイデアルとして単元生成か?」という問題に取り組み,適当な仮定のもとでそれが成り立つことを示した.特に,可換環(Kaplanskyの定理),有限環,半群環に対して成り立つことを確認した.一般の場合は正しくないと考えられている.この問題は群論における未解決問題であるWiegold問題と密接に関係している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年の夏にテキサス農工大学で行われたワークショップに参加した際,M. Sapirバンダービルト大学教授の講義に触発されて距離幾何学的な研究を始めたことにより,離散群の関数解析的な挙動についての研究に対する新たな枠組みを得た.これはThompson群に関する有名未解決問題の解決に向けて,新たな前線を開くものとして期待される.その他にも,離散群論の問題に環論的手法を導入するなど,離散群に対する非可換解析的な研究において幾つかの注目に値する進展があった.
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今後の研究の推進方策 |
23年度は、京都大学数理解析研究所の年間プロジェクト研究「作用素環とその応用」に多数の研究者を招待するため特別の予算を組んだが、招待予定者の複数人がキャンセルしたことにより研究費を次年度に持ち越すこととなった。事情によりキャンセルした研究者のうち幾人かは都合さえ合えば来日の意思があるとのことなので、次年度以降に招待し研究成果を報告してもらう予定である。本研究計画の主要部分については、研究代表者がこれまで通りに数学の研究を続ける予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
例年通り(主に海外の)研究集会に参加し、自らの成果を報告すると共に最新の研究動向について参加者らとの情報交換を行う。具体的には夏にテキサス農工大学、秋にコペンハーゲン大学などを訪れることを計画している。
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