研究概要 |
Alain Conneは1976年にFields賞受賞論文において、任意のvon Neumann環は適切な意味で行列モデルで近似できるであろうという予想を提示した。このvon Neumann環の分類理論における予想は、1993年にKirchbergが作用素環論における全く見掛けの異なる様々な重要問題と同値であることが示されて以来、作用素環論における最重要の未解決予想のひとつとされている。近年この予想はさらに分野の垣根を越え、非可換実代数幾何学や量子情報理論における未解決問題とも密接な関係があることが示された。平成24年度の本研究計画はこの予想に取り組み、この予想が量子情報理論におけるTsirelsonの問題と同値であることを示した([1])。しかし予想の解決はまだ遠いと思われる。Tisrelson問題は量子論における実在論に関係した問題である。Einstein--Podolsky--RosenはEPRパラドックスにより量子論が古典的実在論と両立しないことを指摘したが、その後、古典的実在論に基づく相関関係が満たすべきBell不等式が現実には成立していないことが実験により示され、古典的実在論が棄却されることとなった。それでは量子論に基づく相関関係にどれだけの可能性があるかを問うのがTsirelson問題である。本研究計画では独立した2つの系の間の量子相関関係が、少しだけ相互作用のある系の間の量子相関関係の極限として現れることを示し、Tsirelson問題に対する新たな洞察を得た([2])。 [1] N. Ozawa; Jpn. J. Math., 8 (2013), 147--183. [2] N. Ozawa; J. Math. Phys., 54 (2013), 032202 (8 pages).
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