研究概要 |
Allen-Cahn方程式など双安定な反応項をもつ拡散方程式において,多次元進行波の研究を行った.2005年に2次元V字型進行波解の存在がNinomiya-Taniguchi (JDE, 2005)により証明され,軸対称な進行波が Hamel-Monneau-Roquejoffre (DCDS, 2006)により証明された.この時点で軸非対称な進行波が存在するのか否かは未知であったが,2007年に私は3次元角錐型進行波の存在(SIAM Math.Anal.,2007)を証明した.一般のN次元空間でも角錐型進行波を構成できるか,またそれ以外に新しい多次元進行波を構成できるかという問題意識から本研究はスタートしている.得られた成果は以下の2点である.(1) N次元角錐型進行波解の存在を証明した.この成果は,Kurokawa-Taniguchi (Proc. Edinburgh, 2011) として公表した.角錐型進行波解は3次元の場合は2007年にその存在を証明したが,一般のN次元では未解決であった.本研究ではこの問題を解決した.(2) 軸非対称な3次元進行波解の存在を証明した.この成果は国際学術雑誌DCDS-A に2012年に公表した.3次元角錐型進行波の側面の数を無限大にする極限をとることにより,軸非対称な3次元進行波解を構成することができた.困難な点は,3次元角錐型進行波の遷移層の幅の一様評価を与える必要が生じることである.本研究ではこの困難を克服して上記の結果を得た.
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