研究課題/領域番号 |
23540235
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
谷口 雅治 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (30260623)
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キーワード | 国際情報交換 / 中華人民共和国 / 大韓民国 |
研究概要 |
研究課題「反応拡散方程式における回転非対称な3次元進行波解」に関連し現在までに以下の成果をあげている.(1) Allen-Cahn方程式における回転非対称の3次元進行波の存在証明 (DCDS-A 2012),(2) 反応拡散方程式における局在した進行波で速度がゼロでないものの非存在 (DCDS-A 2013). 回転非対称の3次元進行波については, 私は以前,角錐型進行波(SIAM J.Math.Anal.,2007)の存在を証明した.今回の(1)については,2次元平面における円周上のなめらかな関数が与えられると,それに対応した3次元進行波が構成できるというものである.これは,Hamel, Monneau, Roquejoffre (DCDS-A, 2005)において研究された回転対象な進行波解を,摂動させた(歪ませた)ような形状をもつ3次元進行波である.この回転非対称進行波は,与えられた初期擾乱に対し 復元力をもつ安定な進行波であることが解明できた.(2)については,Allen-Cahn方程式を含むより一般的な反応拡散方程式において,局在した進行波は,速度がゼロの場合は平衡解となり,Gidas-Ni-Nirenbergの定理により,球対象となることが知られている.速度がゼロでない局在進行波が存在するか否かは未解決であった.(2)の結果は,それが存在しないことを数学的に証明したもので,Wei-Ming Ni教授および Yong Jung Kim准教授と私の共同研究として DCDS-A に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回転非対称な3次元進行波を構成するという観点から,この研究計画は現在のところ,おおむね交付申請時の計画に沿って順調に進展している. 2012年に中華人民共和国上海市の華東師範大学において,私は偏微分方程式研究所長である Wei-Ming Ni教授に招聘され,一ヶ月間,集中講義を行った.これにより同大学の若手研究者および大学院生の方々に,V字型進行波および角錐型進行波の存在証明およびそこで用いられる多重スケール法を平易かつ明快に解説することができた. しかしながら研究の目的の達成度を問われると,未知関数が2個以上の反応拡散系で,最大値原理(比較定理)が成立するものに対して,角錐型進行波が存在するか否かは未解決であり,これを証明することが次に求められる.これについては今年度の研究課題の一つとして現在,取り組んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
すでに述べたように,未知関数が2個以上の反応拡散系で,最大値原理(比較定理)が成立するものに対して,角錐型進行波が存在するか否かは未解決である.そのような代表例として競争系がある.2次元V字型進行波については,競争系の場合,Wang により2012年に存在が証明された.一般にN次元の空間において,競争系において角錐型進行波の存在を証明することが,今年度の目標である.方法としては,優解および劣解を構成して比較定理によりその間に角錐型進行波の存在を証明する.優解を多重スケール法でどのように構成すれば良いのかを研究する必要がある.また未知関数が一つのAllen-Cahn方程式において,N次元の回転非対称進行波の存在を証明することが課題として挙げられる. 上記の目標を達成できるように,研究を推進していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては研究費を節約したため未使用残高が生じた.また平成25年度4月より私は岡山大学大学院自然科学研究科に教授として赴任する予定である.このため科研費(基盤研究(C))を新勤務先である岡山大学において使用させていただくことになっている.この研究を推進するために,Wei-Ming Ni教授(ECNU, Univ. of Minnesota), Kim教授(KAIST),俣野博東大教授,奈良光紀岩手大学准教授またその他の国内外の研究者とディスカッションを行うことが必須である.また得られた結果を国内外の学会および研究集会で発表することが必要である.このため国内外への出張旅費を使用する計画である.また書籍,PCなども必要に応じて購入することを計画している.平成24年度に生じた未使用額は上記研究計画にまとめて使用する.
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