2元生成の自由群の可換化のケーリグラフは平面の整数格子を頂点集合とするグリッド格子である。また自由群の元はこのケーリグラフの中の折れ線(ケーリー図式)を定める。平面曲線はこのような折れ線の一般化とみなせる。この観点から、平面曲線のなす群の構造を研究し、曲線の自由群のホール基底による展開、また生成元の形式的対数により生成された自由リー環の元である曲線の”対数”の反復線積分による展開について多くの結果を得た。この自由リー環は、2つの生成元の高次にネストしたリー括弧積により生成されていることが知られているが、その括弧構造をそのまま交換子におきかえ、リー環の生成元をその指数、即ち群の元々の生成元に置き換えればホール基底となる。しかしながら、ホール基底の対数はそれと同じ形をしたリー括弧積だけでなく、多くのほかの形の括弧積との線形結合となることが実験的にあきらかになった。この線形結合の各係数はカンベルーハウスドルフ型の公式により、リー括弧積をホール基底の定めるケーリー図式に沿っての反復線積分により与えられる。この部分の数学的背景を明らかにするために、ホール基底と対応する高次のリー括弧積を同一視し、幾つかの次数(Grade) において、リー括弧積をホール基底ケーリー図式上での反復線積分の値を成分に持つ行列を求め、その固有値と固有ベクトルを決定した。この結果は、ただちに一般の平面曲線の自由リー環への対数展開を経由してホール基底への展開を与えることを可能にしている。
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