平成25年度は、計画の最終年度にあたり非局所項を持つ1階および2階のボルテラ微分積分方程式系の作用素論的な構造研究を中心にして、研究の取りまとめを行った。まづ1階のボルテラ微分積分作用素に対し、変形公式法を一般高階システムに拡張した。この拡張により、1階方程式系に対しては、半群理論に基づく構造理論を構築することができた。それを用いて、非局所項をもつ双曲型システムの制御理論への応用を行った。無限次元システム論における可観測、可制御、安定化、系のロバスト性や最適制御問題の研究にその構造理論を適用した。また2階の放物型システムに対しても、類似の変形公式法を用い非局所項をもつ拡散方程式の境界制御問題や関連する係数逆問題を解決した。以上の成果は、2回の国際学会で発表し、4編の学術論文として結実した。成果は、次の3つのカテゴリーに分けられる。 1.変形公式法をさらに一般な非局所1階システムにまで拡張し、複雑なシステムの構造をより簡単な作用素の構造を調べることに帰着した。さらには、この作用素のスペクトル解析を実行し、一般化固有空間の基底構造を明らかにし、その完備性を古典的な整関数に関する指数型解析を用いて調べた。 2.双曲型非局所システムに対し境界制御問題と安定化問題を考察した。すなわち、関連する制御観測系に対し、境界入力によるフィードバック安定性を実現した。その際に観測の作用素が安定性理論に果たす役割を明らかにした。また可観測性との双対関係も示した。 3.放物型非局所方程式系に対し変形公式法をさらに一般化し、それを用いて係数逆問題を解いた。加えて関連する制御問題への応用を研究し、系の安定性のための幾つかの結果を得た。
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